ANRIというVCで勤務しているナカジです。少しトレンドからは出遅れましたが、昨年のOpenAIの騒動あたりからUSでも注目を浴びているe/acc(効果的加速主義)とEA(効果的利他主義)の概念の対立が顕在化してきているのを見て考えたい問いがあり記事を書いてみました。 テクノロジーとイデオロギーは表裏一体なぜこのような論点を考えたかったかというと、Glen weylという経済学者の、”テクノロジーとイデオロギーは表裏一体である”という言葉が強く自分の中では印象に残っている。 VCとしてもどのテクノロジーに対して投資をしていくのかを考えていく上でも、イデオロギーを考えることは必要だということを改めて認識をしたからである。そのためWeb3とマルクスのようなブログを書いたりした中で今回のテーマも書かざる/考えざるをえないと思った。 ここで重要なのは、テクノロジーとイデオロギーは表裏一体であること
生成AI勃興の裏で加熱するトレンド"e/acc"とは?社会の分断を防ぐために理解すべきことと、日本への示唆 2023年を振り返った時に、AIがコンシューマーにとって初めて実用的になった年だったと記憶されることは間違いないだろう。AIの基礎技術自体は40年以上も前から発展し続けてきた。しかし、あるテクノロジーが世の中のメインストリームになるには、誰もがその力を目の前で直接見ることができる消費者向けのインターフェイスが必要だ。それがスマホにおけるiPhoneであり、遡るとウェブブラウザにおけるNetscape(Mosaic)であり、今回の生成AIではChatGPTだった。 生成AIの普及の裏側で、去年のもう1つの大きな潮流としてテック業界では「効果的加速主義(Effective Accelerationism、略称:e/acc)」という概念が広まった。 効果的加速主義(e/acc)とは?「効果
加速主義ってご存知でしょうか。私も最近、ネット配信で宮台真司さんが志向されていると知り、気にはなったのですが、そこでの情報では十分に理解出来ず、直近読んだ内田樹さんと白井聡さんの対談集「新しい戦前」(2023年8月発行 朝日選書)の中で詳細に触れられてたので、概要がやっと理解出来、なるほどと思う反面、恐ろしい世の中に本当になっていると痛感しました。 加速主義とはアメリカ発の思想で、もう資本主義は末期である。これから世界はポスト資本主義の社会の社会に入っていくが、民主主義や基本的人権や社会正義といった古めかしい近代主義イデオロギーのせいで、資本主義はむしろ延命している。資本主義の欠点を左翼やリベラルが補正しているせいで、もうとっくに滅びてもいいはずの資本主義がまだ滅びていない。むしろ資本主義を暴走させて没落を加速し、資本主義の「外部」へ抜け出るべきだという思想とのことです。 昨今の政治資金パ
the fight for the future is a struggle between technological-driven growth and managed decline. the growth path has inherent risks and challenges along with its fantastic upside, and the decline path has guaranteed long-term disaster. stasis is a myth. — Sam Altman (@sama) January 5, 2024 未来のための戦いは、テクノロジー主導の成長と管理された衰退の間の闘いです。成長の道には素晴らしい上向きの側面とともに固有のリスクと課題があり、衰退の道には長期にわたる災害が確実に存在します。停滞は神話です。 サム・アルト
「ニック・ランド『絶滅への渇き』におけるカントの位置付け」 ○はじめに 先日ゾルピデムという入眠剤を処方された。不眠の症状があり精神科にかかったのだ。幸いうつ病ではないのだが不眠はうつへの第一歩である。おそらく私のようなうつ病予備軍も含めて、先進国と呼ばれる国の若者は病んでいる。これにいち早く切り込んだのは1990年代のイギリスの思想家たちだ。 その一人にニック・ランドという思想家がいる。1990年代後半に『資本主義リアリズム』のマーク・フィッシャーらとCCRU(サイバネティック文化研究ユニット)を運営し、現在は上海で活動していると言われている。CCRUは組織の名前からわかるようにいわゆる「学問的」な組織ではない。それは、文学はもちろんサイバネティクスや音楽、テレビドラマなど非常に多岐にわたる文化を研究するものであった。CCRUの最も素晴らしい書き手であり、現代の閉塞を見抜いていたフィッシ
Utopia, J.D.Wetherapoon tea spoon(2014) ロンドン証券取引所の占拠運動が始まって間もなく、小説家から保守派の政治家に転身したルイーズ・メンシュは、BBCのテレビ番組「Have I Got News For You?」に出演し、この占拠によって「スターバックスの過去最大の行列」ができたと言ってデモ隊を嘲笑した。メンシュが言うには、問題は占拠運動の参加者が企業のコーヒーを買ったことだけでなく、iPhoneも使っていることだ。提言されているのは明白だ。すなわち、反資本主義とは、無政府原始主義であることを意味するのだ。メンシュの発言は、少なくとも番組内で嘲笑されたが、提起された疑問はそう簡単に捨て去ることができない。資本に反対することが、反テクノロジー、反大量生産の姿勢を維持することを必要としないのであれば、なぜ──メンシュのような反対派が作り出した戯画と同様
初期のウェブを席巻したブラウザ・Netscape Navigatorの開発者で、ベンチャーキャピタル・Andreessen Horowitz(a16z)の創業者でもあるマーク・アンドリーセン氏が、a16zの公式サイトで「テクノオプティミスト宣言」を発表しました。「私たちは騙されています」から始まる散文詩のような声明文には、AIなどの技術の発展こそが人類の暮らしをよりよくするとの展望がつづられており、複数のメディアが賛否両論とともにこの宣言の発表を報じています。 The Techno-Optimist Manifesto | Andreessen Horowitz https://a16z.com/the-techno-optimist-manifesto/ Marc Andreessen’s ‘Techno-Optimist Manifesto’: Prometheus, Nietzsch
本稿は、私がある哲学者に宛てたメールを和訳・要約・加筆修正したものである。 "The accelerationist left"(左派加速主義者)には、テクノロジーが持つ力を高く評価する楽観的な側面と、「なればこそ、それがより良い作用をもたらすようにコントロールしつつ使わねばならない」という慎重な側面があるように思う。 今回のメールは前者の側面に比重を置いた内容である。しかし、その後私の中で「NIPT(新型出生前診断)の急速かつ無秩序な広がりによる『命の選別』」への懸念が高まってきた(下記ツイート参照)。従って、今は後者の側面についても、この時よりも真剣に考えるようになったことを予め付記しておく。 新型出生前診断自体を悪と断じる気は無いですが、障害者本人が指針策定やWG等の会議体に殆ど委員として参加できないまま、非認定施設による無秩序な検査がなし崩し的に広がる現状には憤りを覚えます。 昨日
AIや最新テクノロジーは人の仕事を奪うかもしれない――しかし、それを新たな社会をつくるチャンスと捉えようとする思想が、アメリカのミレニアル世代から生まれてきた。彼らがめざす「素晴らしい新世界」は実現可能なのか? ※本稿は、岡本裕一朗著『アメリカ現代思想の教室』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです。 スルニチェクとウィリアムズの加速主義 10年ほど前までは、資本主義に代わるようなオルタナティブは、ほとんど想定されなかった。2008年にアメリカで金融大崩壊が発生し、社会システムを変えるには最も適したその時期に、左翼の大物であるジジェクは「実行可能である代案が示せない」と告白していた。この2008年に示せなかったら、もう永久に示せないのではないか、と思われたのである。 ところが、最近になって「資本主義以後」が少しずつ描かれるようになった。ポール・メイソン(1960―)が2015年に『ポスト
■はじめに 本記事では、ニック・ランドの2017年のエッセイ「加速主義の拙速な紹介(A Quick-and-Dirty Introduction to Accelerationism)」の日訳を掲載する。原文はWEBマガジン『Jacobite』に2017年5月25日付で掲載された記事に拠る。本記事は、400字程度の「導入」と、5000字程度の「日訳」からなる。「導入」では翻訳者が原文の導入的な内容を記述した(私の読解に即してまとめているので、一つの解釈として批判的な参照をお願い申し上げる)。「日訳」では原文を翻訳した。 ニック・ランドに関する日語文献としては、例えば以下の書籍などを参照のこと。 ・木澤佐登志『ダークウェブ・アンダーグラウンド 社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』2019年1月 ・木澤佐登志『ニック・ランドと新反動主義 現代世界を覆う〈ダーク〉な思想』2019年5月 ・『
AIの研究開発が急速に進む中、AIの安全性を重視するように求める声も目立つようになっています。一方で、テック業界では「テクノロジーを規制せずに技術進歩を無制限に加速するべき」とする思想「効果的加速主義(e/acc)」も広がりつつあります。 This A.I. Subculture’s Motto: Go, Go, Go - The New York Times https://www.nytimes.com/2023/12/10/technology/ai-acceleration.html A New Wave in AI: The Rise of Effective Accelerationism – Cryptopolitan https://www.cryptopolitan.com/a-new-wave-in-ai-the-rise-of-accelerationism/ AIの
最近、OpenAIのアルトマンCEOの解任騒動などを通じて、効果的利他主義(EA)と効果的加速主義(e/acc)の対立が話題となっています。 効果的加速主義を先導したベフ・ジェゾス氏は、これまで実名を明かさずに活動を続けてきましたが、この度、姿を現して、レックス・フリードマン氏との対談に応じました。 なお、レックス・フリードマン氏は、タジキスタン出身のアメリカの人工知能研究者で、多くの有名人との対談を配信している人気のポッドキャスターです。 大変貴重で有意義な内容を含んでいるので、是非、この動画を見て、全文を読んでいただきたいのですが、非常に長いため、ここにテーマごとの概要をまとめました。 1.イントロダクション主要なキーワード: レックス・フリードマン、ギョーム・ヴェルドン、@BasedBeffJezos、e/acc運動、量子機械学習、Google、Extropic、AI進歩 要約: レ
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