公開日 2023年12月21日 14:45, 更新日 2023年12月21日 14:57, 無料記事 / オピニオン カネを稼いだやつがエラいのか?という問いは、それほど目新しい問いではない。 高山裕二氏の名著『トクヴィルの憂鬱』では、19世紀前半のフランスにおいて身分制が無くなったことで、自分が「何者でもない」という不安に苛まれる新しい世代の誕生が描かれる。『アメリカのデモクラシー』を描いた思想家、アレクシ・ド・トクヴィルも、そうした不安に鬱々となった1人だ。 身分制という強烈なアイデンティティの喪失によって生まれた「何者でもない」という不安は、金を稼ぐことや立身出世によって覆い隠す他なかった。先祖代々の「貴族だからエラい」という保証がなくなった時代、自尊心を保証してくれるのは、自身の「才能」や「努力」だけで獲得できた(と思い込めた)資本(財力)だった。18世紀から19世紀にかけてグロー