アッシジの聖フランチェスコ [著]ジャック・ルゴフ[掲載]2010年9月26日[評者]田中貴子(甲南大学教授・日本文学)■「私」による聖人像 史料を精査し描く 世界の観光客が訪れ続けるイタリアの町、アッシジ。風光明媚(ふうこうめいび)な都市は、中世の聖人、フランチェスコゆかりの土地でもある。アッシジのフランチェスコといえば、日本人にもっともよく知られたカトリック聖人の一人ではなかろうか。ジョットのフレスコ画にも描かれた「小鳥への説教」の挿話は有名であるし、1973年公開の映画「ブラザー・サン シスター・ムーン」をはじめ、その生涯はしばしばスクリーンを通じて日本人の知るところとなった。 フランチェスコはまた、平和を願い清貧に生きた人物として、マザー・テレサが崇敬したともいわれる。彼が創設した修道会(フランチェスコ会)の活動も、歴史上の知識として知っている人も多いだろう。 本書は、一般に流布し