→紀伊國屋書店で購入 安部公房の一人娘、ねり氏による父親の伝記である。 実の娘というだけでなく、日本の全集のレベルを越える完全編年体の精緻な『安部公房全集』を編纂した人の書いた伝記だけに、資料的価値が高いことはいうまでもない。さまざまな年譜や事典の記述、最近の『安部公房・荒野の人』にいたるまでに蓄積してきた誤りを正し、安部公房の伝記的事実を明確にしたのはもちろん、別刷の写真ページが48ページもある。それ以外にも多数の写真が掲載されており、そのほとんどが今回はじめて公開されたものだ。 最後のセクションは「インタビュー」となっていて、『安部公房全集』の月報に掲載された関係者25名のインタビューを再録している。すでに鬼籍にはいった人がすくなくなく、関係者の日記でも発見されない限りこれ以上の話は出てこないだろう。 安部の小説によく登場する山師のモデルとおぼしき叔父がいたり、安部公房自身も叔父から受