神奈川県大磯町で昨年11月、79歳の妻を車いすごと海に突き落とし、81歳の夫が殺人容疑で逮捕、起訴された。約40年、体が不自由な妻を介護した夫は「疲れた」と話しているという。2人に何があったのか。記者が現場を歩いた。 「散歩に行こう」。昨年11月2日午後5時過ぎ、車いすの妻を連れて夫が向かった先は、大磯港の岸壁だった。 夫は無職の藤原宏被告。起訴状によると、大磯港で、妻を車いすごと岸壁から海に突き落とし、溺死させたとされる。 この港から車で10分ほど。団地の一室で夫婦は暮らしていた。「献身的に奥さんに寄り添っていた」。近隣住民は取材に口をそろえた。 約40年前、妻は脳の病気を患い、半身が不自由になった。夫婦の知人によると、仕事に向かう夫を見送った後に倒れたという。当初は杖をついて歩いていたが、やがて車いすの生活になった。