岸田文雄首相と高市早苗経済安全保障担当相の熾烈な権力闘争が、経済安保の強化に向けた議論に影を落としている。米中対立の激化を受け、先端技術の開発や機密情報の保全徹底は待ったなし。にもかかわらず、経済安保分野で日本は大きく出遅れている。 象徴的なのは、機密情報を欧米並みに厳しく管理するための新制度創設を盛り込んだ、経済安保推進法改正案の今国会への提出が見送りとなったことだ。 その背景には、高市氏の岸田首相に対する挑発的とも言える姿勢や、4月に統一地方選を控える中、世論を分断しかねない法案を先送りしたい官邸側の意向がある。 「セキュリティー・クリアランス」とは? 経済安保は、政府が暮らしや経済活動に与える脅威を取り除き、医療品やエネルギー、半導体、食料など日常生活に欠かせない重要物資を安定的に供給することを指す。この概念が定着したきっかけは、新型コロナ感染拡大でマスクがドラッグストアなどの店頭か