パリ左岸に「欧州版シリコンバレー」を目指すデジタル拠点「ステーションF」が、昨年夏に生まれた。駅舎の跡に巨大な体育館のようにそびえる。月195ユーロ(約2万6千円)で机と機材が借りられ、50カ国から集まった起業家約千人がミニ事務所を構える。 「トランプ米政権の発足や英国の欧州連合(EU)離脱は、私たちには大チャンス。米英両国の将来に不安を抱く人材を吸収できる」。こう話すロクサーヌ・バルザ所長(32)自身、シリコンバレー生まれの米国人女性だ。仕切りのない館内で、Tシャツ姿の「起業家の卵」たちが、やがて大化けする日を夢見て、互いの構想を語り合っていた。 1年前の欧州は、米英発のポピュリズム(大衆迎合主義)旋風に脅えていた。それが5月、フランスに若いマクロン大統領が誕生すると、空気が変わった。大統領は就任早々、ステーションFを作り、若い起業家たちに「この国を変えろ。主役は君たちだ」と檄を飛ばした