「どうも気恥ずかしいうちあけをしなければならない。ぼくは漫画映画のヒロインに恋をしてしまった。心をゆすぶられて、降り出した雪の道をよろめきながら家へ帰った」 ――1996年に徳間書店から出た宮崎駿のエッセイ・講演録『出発点―1979~1996』に、こんな一説がある。そのヒロインとは、1958年、東映が手がけた日本初の長編アニメーション『白蛇伝』の白娘であった。 現在、DVDも発売され観賞する機会も得やすくなった、この作品。本編もさることながら予告編にも驚かされる。当時の東映社長の大川博の挨拶から始まり、その挨拶に併せて東映撮影所の中に設けられた制作スタジオの風景が映されていくのだ。「大東映が世界に放つ」というキャッチなんて、どれだけ力を入れているんだと、驚くばかりだ。 この映画を見た当時、宮崎駿は17歳。その彼が東映動画を経て世界に知られる作品を生み出すようになるとは、誰も考えなかっただろ