【柄谷雅紀】晩婚ながら、20年以上連れ添ったおしどり夫婦。幸せは突然、崩れ去った。夫による妻の絞殺。防ぐことは、できなかったのか。 連載「きょうも傍聴席にいます。」 昨年の夏の夜。男(76)は、東京都国立市の自宅で妻(当時65)の首をネクタイで絞めて殺害した。自ら110番通報し、その後、殺人罪で起訴された。 事件から10カ月、男の姿は、東京地裁立川支部の法廷にあった。黒いスーツにノーネクタイ。クリーニング工場のアイロン職人として60年近く働いてきたらしく、パリッとのりがきいたワイシャツが印象的だった。その姿を、6月11日から始まった裁判員裁判で見つめた。 男の供述に沿って、経過をたどってみる。 1959年に前妻と結婚し、長男と長女をもうけたが81年に離婚。8年後、転職したクリーニング工場で新しい妻に出会った。当時、50代と40代だった。 すぐに魅せられた。「仕事がテキパキできて、