「せめてお別れだけでもしたい」 いくら探しても見つからないという家族から依頼を受け、山岳地帯や里山における行方不明者の捜索を行う民間団体の活動を綴ったノンフィクション『「おかえり」と言える、その日まで―山岳遭難捜索の現場から―』が刊行された。 著者は、医療資格保持者や山岳・登山ガイド、山岳救助経験者などで構成された山岳遭難捜索チーム「LiSS(リス)」代表の中村富士美さん。 深い悲しみや苦しみを抱える家族をケアしながら、行方不明者のプロファイリングを元に捜索している同団体の代表が、これまで経験してきた遭難捜索の現場を詳らかにした本作を、女優の中江有里さんが紹介する。 中江有里・評「遭難者を発見する“だけじゃない”ドキュメント」 十代の頃、映画撮影のため毎日のように山を登った時期がある。総勢五十人ほどのスタッフとともに登って下りる日々は体力的には厳しかったけど、充実感があった。山は楽しい、と