「銀幕の女神」は静かに天へ翔けていった--。清純派の美人スターとして戦前戦後を通じて活躍した伝説の女優、原節子(はら・せつこ、本名・会田昌江=あいだ・まさえ)さんが、9月5日に肺炎のため死去していたことが分かった。95歳だった。「平凡パンチ」「anan」などの編集に携わった作家で昭和倶楽部主幹の藤田武司氏(72)が故人をしのんだ。 子供の頃、原節子の映画はたいてい3本立ての1本として見ていた。私の目当てはチャンバラや喜劇、母や姉は文芸作やメロドラマなのだが、双方の望みを叶(かな)えてくれるのが複数興行のありがたさだ。しかも2本立ての封切り館より入場料が安い。そして、目当てではなかった作品に感動し、涙することも珍しくなかった。小津安二郎監督の「東京物語」もそうした一本で、学生時代このかた何度も見直すことになった。 「東京物語」と称しながら、この映画は広島県の尾道(おのみち)から始まる。東京で