身内が亡くなったので、久しぶりに実家に帰った。 私と母はほぼ絶縁状態にあるが、火事と葬式だけは顔を出さなければならない。 葬儀はしめやかに執り行われ、私は実家に帰って、ネクタイを外して、母の淹れた茶を飲んだ。 茶飲み話で母は私の近況を尋ね、私はそれを適当に受け流していたが、身内を亡くしたという事実か、あるいは私の態度か、もしくは私の現況のどれかが彼女の精神のピークを上げてしまったのか、やがて言葉が止まらなくなった。 彼女の話は、貧しかった幼少期から始まり、高度成長期の狂奔じみた時代を駆け抜けた苦労に達し、結婚生活で不幸な境遇を耐え忍んだ話に至る。 そういう長い前置きが終わってようやく、話は私が大学を中退して、酒をかっくらってフラフラ生きているという否定しがたい事実に達するのだが、冷静にそれだけを咎められれば私にだって言い分はあるのだけど、決してそうでないし、相手の口調が怒気をはらんでいるの