倉田幸信 「翻訳者の書斎から」第5回 "The Coddling of the American Mind" ( 甘やかされるアメリカン・マインド ) by Greg Lukianoff, Jonathan Haidt (グレッグ・ルキアノフ、ジョナサン・ハイト) 2018年9月出版 いきなり私事で恐縮だが、私は主夫として2人の子供を育てたことがある。1人目の長男のときは、屋外だろうが室内だろうが、一度でも床に落ちたおしゃぶりはすべて煮沸消毒していた。バイキンが怖かったからだ。だが2人目の長女のときは、多少の泥がついたおしゃぶりでも、適当に服でぬぐってそのままくわえさせていた。赤ちゃんはけっこう頑丈だとわかったので、面倒くさいことはしなくなったのだ。 その後、医学の世界で“幼少期の環境があまりに清潔だと免疫力が低くなる”とする「衛生仮説」の考え方が広まっていることを知り、我が意を得たりと思