ナガバノイシモチソウ(Drosera toyoakensis)の花を訪れたヒメヒラタアブ。(写真提供:田川一希) モウセンゴケが生きた昆虫を捕らえている場面に遭遇するのは、さほど珍しいことではない。食虫植物がやせた土壌から得られる少ない養分を補うために、昆虫から養分を摂取することもよく知られている。 ただしそうした光景の裏側には、食虫植物の狡猾な策略があるのかもしれない。科学誌「Ecological Research」に九州大学の田川一希氏らが発表した論文によると、日本の湿地に生息する2種のモウセンゴケは、近くに生える植物の花に引き寄せられてきた昆虫を盗み取っているのだという。(参考記事:「投石器方式で獲物を放り込む食虫植物」) これは、これまで動物でしか確認されていない「盗み寄生(労働寄生)」の例だと考えられる。「盗み寄生」の状態にある生物は、他の種から食物を手に入れる一方で、相手には何