「飛鳥美人」に代表される高松塚古墳(奈良県明日香村)の極彩色壁画が、修復後も当面古墳に戻せない見通しになった。戦後考古学最大の発見とされ、国宝に指定されてから40年。「当面」がいつまでなのか、見通しは立っておらず、「現地保存」という考古学の大原則が揺らいでいる。 【壁画を元に戻した場合は…】 31日に東京都内で開かれた文化庁の検討会で、ある委員は石室が解体され、壁画のない古墳を「もぬけの殻」と表現。特別史跡としての価値があるのか、議論すべきだと主張した。複数の委員が「墓がある場所としての精神的な意味がある」などと反論した。しかし、高松塚に費やした約1時間は資料説明が多く、議論は低調で沈黙も目立った。 終了後、委員の森川裕一・明日香村長は「(現地に戻すことは)かなり難しいと感じた」と話し、古墳と壁画の一体的な保存や展示を考えるよう求めた。 修復後も当面壁画を戻さないことについて猪熊兼勝