「しかしながら、犯人の行動の中に、そのヒントとなる何かが見つかるかもしれません。カメラを使った念視と小生の描写を併用して、皆さんにも小生の視た映像をなるべく正確にお伝えしましょう。必ずや犯人の姿をこの眼に収めてみせます。小生も筧君を怨霊になどしたくありませんから」 「それはそれは、心強い発言ですね。あっしらも期待してますよ」 明るい表情を見せた我王区は、洗顔直後を思わせる豪快な仕種で顔面を拭い始めた。 無人の長テーブルに寂しく置かれていたロックグラスも別のスタッフに片づけられ、新企画のお膳立ては終了した模様だ。 出演者らの振る舞いを唖然とした顔で眺めていた壱八は、自分が今とんでもない場所に居合わせているのでは、と思い始めていた。 クレーム必至の超常現象トンデモ系バラエティ番組〈ガダラ・マダラ〉。その出演者だった故人の追悼は、名目上も過去の遺物となり果てていた。番組の企画を変更させ、殺人犯を