「情けは人のためならず」という言葉があります。「人に対して情けを掛けておけば,巡り巡って自分に良い報いが返ってくるという意味」です(文化庁月報より)。社会は複数の人々の行動が相互作用・相互依存する場なので、ある人が社会に対して異なる行動を取れば、社会からのレスポンスも違ったものになります。「自分が得したいのなら、まずは他者を得させよ」というのは、人間社会をスムーズに動かすための先人の知恵と言えるでしょう。 この発想は、経済政策を考える際にも重要です。経済システムも個人・企業・政府が相互作用・相互依存する場なので、個々の主体が目先の利益を重視しすぎると、経済全体では望ましくない状態が実現してしまいます。その代表例が「倹約のパラドックス」で、個々の主体が手持ち資金の減少を避けようとして倹約に励むと、総需要の減少=総所得の減少が引き起こされ、より貧しくなってしまうことです。 (追記:関連記事【渋