「とうとうあの人も行ったらしいぞ」――。パワー半導体分野の学会やイベントで、日本の研究者や技術者が集まると決まって話題になるのが、中国企業への移籍である。中でも、頻繁に登場するのが華為技術(ファーウェイ)だ。 ファーウェイは自動車分野に力を注いでおり、電動化の要となる車載パワー半導体の技術者をかき集めている。かつて日本の大手自動車メーカーでIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やSiC(炭化ケイ素)などのパワー半導体の研究開発を主導してきたベテラン技術者がファーウェイに転職するなど、既に人材流出は始まっている。 ファーウェイは、スマートフォンやパソコンなどの「弱電」から、蓄電設備やデータセンターなどの「強電」まで、幅広いパワーエレクトロニクス技術を有するといわれている。それでも車載分野は特殊であり、経験者の採用は不可欠だ。そこで、ハイブリッド車を中心に自動車の電動化で先行してきた日