著: 先崎学 昨年の末、妻とふたりで札幌に二週間ほど滞在した。私は将棋指し、妻は碁打ちである。棋士という業種は自由な時間が多いわりに旅行の日程が立てにくい。なぜならば、対局のほとんどはトーナメントであり、勝つとどんどん忙しくなっていくからである。じゃあ負けが込んだときに行けばいいじゃないかと思われるかもしれないが、負けることを前提に予定を組むアホはいないので、必然、まとまった旅行がしにくくなる。年末は対局もなく、絶好の旅行どきなのである。 それはさておき、のんびりとした旅であった。昼間は主にスキーをして、夜は居酒屋で一杯やる。すこし仕事もした。現地の子どもたちに将棋を教えたりして、これは言っちゃあなんだが、気楽な仕事で、またなかなかに保養にいい。盤にくいいるエネルギッシュな若い目は、くたびれた中年夫婦にほのかなリラックスを与えてくれた。 私は幼少期を札幌で過ごした。正確には、幼稚園の年中か