人生に行き詰まるとお菓子を作りたくなる。 これは中学の頃からの私の悪癖で、高校生になって母親から指摘を受けるまで自覚なしに台所に立っていた。特にお菓子作りが得意というわけではない。高校二年生の頃、とにかくたくさんクッキーを焼きたくなって、倍量で一気に作ったらぺりぺりのおこげみたいな甘いせんべいが大量にできたことがある。 それでも私はボウルを抱え、泡立て器を、ゴムべらを、無心で振るった。オレンジの輪切りを乗せた、中途半端なふくらみのカップケーキ。こってりとした甘さのフォンダンショコラ。アプリコットジャムをつやつやに塗ったチーズケーキ。どれもお店のように綺麗にできた訳ではないけど、家族三人でおいしいやん、と言いながら食べていた。 休職生活も一ヶ月を過ぎ、久々に「その感じ」が戻ってきた。底が見えてきた預金残高と先が見えない人生。スーパーに行ってご飯をつくって食べて寝るだけの日々。どうしよう、どう