作家芥川龍之介の作品として知られながら、長らく未完成とされてきた短編が当時の医学雑誌に掲載され、この雑誌が京都府立医科大付属図書館(京都市上京区)で保管されていたことが、東京の研究者の調査で分かった。同図書館は「掲載から100年を経て思いもかけない発見となった。広く知ってほしい」として、
「歌聖」とたたえられた藤原定家による古今和歌集の直筆注釈書「顕注密勘」が、「王朝の和歌守(うたもり)」とされた冷泉家で見つかった。古今集の歌の解釈や言葉の意味を後世に伝えた「古今伝授」に関わる資料の一つとみられ、100点超の冊子・古文書とともに一つの箱に収められていた。専門家は、和歌の家に伝わった古今集や古今伝授の「神髄」を物語る重要な資料群とみなしている。 「冷泉家の古今伝授は藤原俊成、定家から守り伝えられてきた教え。今回、(歴代当主が教えを継承してきた)勉学の跡を示すおびただしい数の資料が見つかった」。冷泉家住宅(京都市上京区)での記者会見で、同家の第25代当主で時雨亭文庫の冷泉為人理事長はそう切り出した。
3/15(金)、一橋講堂(千代田区一ツ橋)にて、DHの国際シンポジウム「ビッグデータ時代の文学研究と研究基盤」が開催されます。そこで基調講演をしてくださるTed Underwood先生は、ビッグデータ時代の文学研究に正面から取り組む英文学者として活躍しておられ、2019年、その成果として「Distant Horizons: Digital Evidence and Literary Change」をシカゴ大学出版局から刊行されました。この本の序文は、大変興味深いものであり、膨大なデジタルテキストをにどのように取り組めばよいのか、そして、それによって、人がただ読むだけではうまく見えてこなかった文学の様々な側面、特に文学史やジャンルがどのようにして見えるようになるのか、ということについて、ラディカルな議論と一つの解決の方向性を提示しておられます。本の全体としてはその具体的な方法も示されています
大河ドラマ「光る君へ」をおもしろく観ている。平安時代の政治劇が楽しい。 「光る君へ」第1回の漢文について書いた記事が、思いがけず好評をいただいた。ありがとうございました。 そこに大抵のことは書いたし、第2回はあまり漢文が出てこない。もう「光る君へ」関連の記事は書かないつもりだった。 ところが一昨日、また遅ればせながら第3回を観たら気が変わった。やっぱりよく作られた雰囲気の中にあるアナクロニズムがおもしろい。 無毒なアナクロニズムはドラマの楽しみのひとつだ。噛めば噛むほど味が出る。 そこで、第3回に出てくる漢文の描写のアナクロニズムをまとめてみた。(今回は詩、つまり漢詩もあるけれど、ひとくくりに漢文と言う。) 孟子(34:20頃~)永観2年。西暦では984年。藤の花の盛りの時期。 主人公のまひろは、左大臣源みなもとの雅信まさのぶの屋敷で倫子ともこたちと偏継へんつぎをして遊んでいた。 一方、藤
昨日かなり遅ればせながら、大河ドラマ「光る君へ」の第1回を観た。 力の入ったセットや小道具で、それらしい雰囲気が出ていてよかった。大筋で雰囲気が出ているから、細部にあるアナクロニズム(後の時代のものごとが紛れこむ時代錯誤)が、かえっておもしろい。 「光る君へ」の調度品のしくじりを発見。 藤原兼家の後ろの唐屏風に書かれている人物が明らかに清国人w(平安時代だったら宋代か唐代の人物のはずなのに)#光る君へ pic.twitter.com/zwc1jeaayX — 介 (@suke88887) January 7, 2024 視聴前にこのツイートを見ていたから、多少の先入観があったことは否定できない。けれども、過去を描くのにアナクロニズムはつきものだ。無毒なアナクロニズムなら、アナクロニズムとして美味しく楽しめばいい。 第1回は少女時代の紫式部の話。ちなみに「少女時代の紫式部」という表現もアナク
デジタル化された徒然草の写本は1431(永享3)年、室町時代を代表する歌人・正徹(しょうてつ)が書写したとされるもので、世田谷区の静嘉堂文庫が所蔵している。 資料館と同文庫は2022年、歴史的な書物を活用した国際研究の推進を目的に、所蔵品のデータベース化に関する覚書を締結。今回、デジタル化の第1弾として、徒然草などの和書2069点を計約39万枚の画像としてデータベースに登録した。 公開されたデジタル資料では、正徹が書写した「徒れつれなるままに日くらしすゝりにむかひて」で始まる徒然草の全文が確認できる。ほかにも平安時代から鎌倉時代の歌人・西行(さいぎょう)の一生を記した「西行物語」の最古の書写本や、安土桃山時代から江戸時代にかけて刊行されたイソップ物語の日本語訳本「伊曾保物語」などが登録された。
文学通信|多様な情報をつなげ、多くの「問い」を世に生み出す出版社 日本語・日本文学の研究書を中心に、人文学書全般を刊行する出版社、文学通信のブログ。 文学だけにこだわらず周辺領域も含め、意欲的に刊行していきます。 出版活動と同様に、webでも積極的に活動することで、多様な情報をつなげ、多くの「問い」を世に生み出していきたいと思います。 〒113-0022 東京都文京区千駄木2-31-3 サンウッド文京千駄木フラッツ1階101 電話03-5939-9027 FAX03-5939-9094 info@bungaku-report.com インボイス登録番号:T4011501023591 井口洋『『奥の細道』の再構築』刊行にあたり、文章をお寄せ頂きました。井口洋「悪戦苦闘のドキュメント」です。ぜひお読みください。 ●本書の詳細は以下より 井口洋『『奥の細道』の再構築』(文学通信) ISBN978
わすれもの、うせものがたえない毎日を送る忘却散人(飯倉洋一)のブログです。2008年3月スタート。日本近世文学。 軽い読み物として、推敲もなしに書いていますので、学術論文などへの引用はお控えください(どうしてもという場合は、事前にコメント欄にでもご連絡下さい)。エッセイなどでの引用やSNSなどでのリンクはご自由にどうぞ。 深沢眞二さんの『芭蕉のあそび』(岩波新書、2022年11月)。 帯に「芭蕉だって笑ってほしいに違いない」と、本書中の文章を使ってコピー風に書かれている。古池に何匹もの蛙が飛び込んでいる図とともに。 芭蕉が、あまりにも真面目に、深刻に、崇高に解釈されてきていて、それは芭蕉の神格化には大いに意味があったのだろうが、芭蕉の作った句は、俳諧なのであって、そのベースは滑稽であったはず。そこを見過ごしては、本来の芭蕉の面白さを見失いますよ、という立場で、深沢さんは芭蕉の句の〈あそび〉
『この世界の片隅に』などの代表作で知られるアニメーション映画監督の片渕須直氏は、次回作で清少納言および彼女をとりまく人々を描く予定です。 片渕氏は作品を創作するにあたり、徹底した考証を行っています。調べることは、先人たちの思いに向き合い、かつ私たちが生きるこの時代を再認識することにつながると語る片渕氏に、千年前の人々の人生の道のりを辿る創作活動の裏側を披露していただきます。 さらに、ないじぇる芸術共創ラボのワークショップで対話を重ねてきた平安文学の専門家・東洋大学准教授の山中悠希氏が、片渕氏とともに、過去の世界を調べつくし、深読みすることの面白さを語り合います。 清少納言が確かにいたのだという証しを、彼女がどんなところでどんなふうに生きていたのかというその片鱗からはじまるさまざまを、アーティストと研究者との密度ある対話によって迫ります。
わすれもの、うせものがたえない毎日を送る忘却散人(飯倉洋一)のブログです。2008年3月スタート。日本近世文学。 軽い読み物として、推敲もなしに書いていますので、学術論文などへの引用はお控えください(どうしてもという場合は、事前にコメント欄にでもご連絡下さい)。エッセイなどでの引用やSNSなどでのリンクはご自由にどうぞ。 『百人一首の現在』(青簡舎、2022年10月)を、執筆者複数の方の連名でご恵投いただいた。本ブログでも既報した通り、近年、田渕句美子氏の立論により、『百人一首』は藤原定家の撰ではない、ことが確実になりつつあり、それを踏まえて、『百人一首』と『百人秀歌』と、その両者の関係、撰者、本文、伝本、注釈、研究史を見直し、新たな展開へと導こうする重厚な一冊が本書である。中川博夫・田渕句美子・渡邉裕美子三氏の編。執筆者は編者の他に久保田淳・小川剛生・田口暢之・久保木秀夫・木村孝太・川上
奈良時代に都が置かれた奈良市の平城宮跡から、今の和歌にあたる「倭歌(やまとうた)」と記された木の札、木簡が見つかりました。調査にあたった奈良文化財研究所は「日本古来の歌を『やまとうた』と記した最古の例になる」としています。 木簡は、平城宮跡のうち天皇の住まいがあった区域の近くを流れる水路の跡で見つかりました。 長さはおよそ30センチ、幅は3センチほどで、およそ1300年前の奈良時代前半ごろのものとみられます。 調査にあたった奈良文化財研究所などによりますと、木簡には古代日本を意味する「倭」と「歌」の文字のあとに、日本語の音に漢字をあてた「万葉仮名」で和歌が記されていて、冒頭の2文字は日本古来の歌を意味する「やまとうた」を示しているということです。 これまでは平安時代の「古今和歌集」が「やまとうた」と記した最も古い例とされてきましたが、今回の発見でおよそ100年さかのぼるとしています。 奈良
目次 【前編】 《巻頭言》「国文学研究資料館の調査カード:未来にむけた集成と利用」 幾浦裕之:人間文化研究機構国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター 《連載》「Digital Japanese Studies 寸見」第89回 「米国現代語学文学協会(MLA)、言語文学分野における社会参加型人文学の評価方法についてのガイドラインを公表」 岡田一祐:北海学園大学人文学部 《連載》「欧州・中東デジタル・ヒューマニティーズ動向」第50回 「TEI Lex-0および CLLD / CLDF による辞書・語彙資源のデジタル化」 宮川創:人間文化研究機構国立国語研究所研究系 【後編】 《連載》「デジタル・ヒストリーの小部屋」第8回 「イギリス女性参政権運動のコーパス分析と Gale Digital Scholar Lab:デジタル・ヒストリーと新聞史料(3)」 小風尚樹:千葉大学人文社会科学系教育研
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