「新喜劇って松竹にもあるんやな」。大阪・道頓堀の劇場に掛かった看板を見た家族連れが、そう言って通り過ぎて行くのを見た。 テレビ放映がなくなって久しい松竹新喜劇。知名度の低下は正直否めない。 ただ、吉本新喜劇の「かいーの」「ごめんくさい」といったギャグは知っていても、演目を知る人はほとんどいない。一方、松竹新喜劇は「人生双六(すごろく)」「親バカ子バカ」「桂春団治」「大阪ぎらい物語」など演劇史的に残る演目を持つ。 昭和から生きる関西人は、そうした芝居で看板役者・藤山寛美らが見せた泣き笑いに心動かされてきた。もっとも平成世代になると、そうした演目をも知らない人が増えているが。 5月、松竹新喜劇が代替わりした。寛美亡き後、1990年代から代表を担った三代目渋谷天外(68)=京都産業大出=が代表を勇退し、寛美の孫・藤山扇治郎(せんじろう)(36)=京都市出身=ら若手5人を軸とする新体制になった。大