情報法制研究所(JILIS)は2019年6月15日、第3回情報法制シンポジウムを東京大学伊藤国際学術研究センターにて開催しました。 「海賊版サイト対策と静止画ダウンロード違法化問題」について報告したのは、小島立九州大学准教授。 海賊版サイト対策とブロッキングの問題から派生した、違法ダウンロード拡大問題。従来は音楽と映像に限定されてきたダウンロード違法化の範囲を静止画やテキストなど全てに拡大しようとする著作権法改正案。規制範囲が広すぎる、表現や研究、国民の日常利用が萎縮するといった問題を抱えていたあの法改正、結局最後はギリギリで阻止されました。 文化庁は議論を拙速に進行、その手法については当時批判の声も多く聞かれました。 あの問題について、文化庁文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の委員も務めた小島立九州大学准教授が振り返ります。 違法ダウンロード拡大、攻防を振り返る 異例づくし、法
政府は13日、今国会への提出を目指していた著作権法改正案について、提出を断念した。著作権侵害物の全面的なダウンロード違法化について理解が十分に得られていないとして、自民党が提出を認めないことを決めたためだ。党の部会がいったんは認めた方針が覆る異例の展開を経て、当初の狙いだった海賊版対策は「振り出し…
こちらのコラム、だいぶ長くご無沙汰してしまいました。いつもここでは外国の情報政策について扱っているのですが、今日は珍しく日本の情報政策について少し書きたいと思います。 ※190226追記:「2.著作権教育の萎縮」の最後に少し補足を致しました。 いま様々なメディア等で、著作権法の改「正(?)」によるダウンロード違法化の拡大が非常に注目を集めているところですが、僕自身、この議論の元になる報告書を出した文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の委員をさせて頂いています。といっても2018年度から委嘱頂いたばかりの「一年生」なのですが、議論への微々たる貢献以上に、著作権法が実際にこうやって作られているんだ、ということを間近に見て、情報政策研究者として非常に貴重な勉強の機会を頂いています。 普段僕自身、本件に限らず自分が直接審議等に関わっている事項については、ネットやメディア等で発言しないポリシ
昨日、参議院議員会館で掲題の集会があり、主催者の求めに応じてメッセージを寄せましたので、以下に掲載します。 2012年に録音・録画の違法ダウンロードが議員修正で刑事罰化されたときに、日本の著作権法の底が抜けたと、わたしはみています。底が抜けたとは、審議を尽くさないまま、政治主導で法改正をするようになったということです。保護期間延長がその悪い例です。 先の法制・基本問題小委員会で、とても残念だったことがふたつあります。ひとつは、少なくない委員が審議の継続を求めるなか、事務局が強引に議論を打ち切ったことです。ダウンロード違法化拡大のための法改正を、とにかく今国会で行うというスケジュール以外に、審議を打ち切る理由はなかったようです。 もうひとつは、パブリックコメントで出された国民の懸念に対して、「価値ある創作活動が行われ得るといった理由により、違法にアップロードされた著作物の利用を正当化すること
文化研究者・山田奨治の仕事(Blogは熟考中のことを書いているので、後で考えを変えることがあります。内容は個人的なもので、所属組織の立場、考え、意見等を表すものではありません。) 今日の委員会の結論は、違法化拡大に慎重で審議の継続を求める複数委員の意見が出たものの、スケジュール最優先の事務局が押し切り、報告書案を承認せず文言修正が主査預かりになったことはツイッターで述べたとおり。(ちなみに、違法ダウンロード拡大以外の部分は、パブコメ案に一部修正が入ったものの、異議なく承認された。) 方向性としては、ダウンロード違法化の拡大は行うものの、その条件については限定し(たとえば原作のまま、商業的規模など)、民事よりも刑事でさらに限定するといったことになりそうだ。 したがって、案の実態から「包括的ダウンロード刑事罰化」とわたしが勝手に呼んできたことを改めることにして、これからは「違法ダウンロード拡大
海賊版だと知りながらインターネット上にある漫画や写真、論文などあらゆるコンテンツをダウンロードする行為を違法化しようと、文化庁が異例の急ピッチで作業を進めている。わずか5回の審議で週内にも議論を終える方針だ。一般のネット利用者への影響が大きい割に議論が拙速だとの批判が強まっている。 文化庁は25日に文化審議会著作権分科会の小委員会を開き、現在は音楽や映像に限っている海賊版ダウンロードの違法範囲をネット上のすべてのコンテンツに広げるため、意見の最終とりまとめをする方針だ。今月始まる通常国会への著作権法改正案の提出を目指している。 学者や弁護士など26人で構成する小委員会が違法ダウンロードの拡大の議論を始めたのは昨年10月29日。海賊版の被害を訴え賛成している出版業界のほか、「ネット利用が萎縮する」と反対しているインターネットユーザー協会など、賛否双方の立場から聞き取りをしてきた。 委員からは
文化庁の違法ダウンロードの範囲拡大に関するパブリックコメントの締切が明日に迫っている。文化庁はご丁寧に「『ダウンロード違法化の対象範囲の見直し』に関する留意事項」などという注意書きまで用意して、議論の方向づけにご熱心である。文化庁としては可及的速やかに範囲拡大のGOサインを政府に出さなくてはならないので、 余計なことを書いて面倒をおこすなというところか。あるいは趣旨の沿わぬ意見を無視する口実のつもりなのだろうか。 もちろん、文化庁としては権利者団体の意見を拝聴し、学者の意見も交えて体裁を整えたので、これ以上変えたくもないというのが本音だろうし、パブリックコメントも国民の意見を聞いたというアリバイにさえなればよい。 政府知財本部の海賊版対策TFが混乱のうちに結論を出せぬまま散会したことを受けて、このままではブロッキング要請を強行し、TFで拳を上げた政府や業界関係者の面子が立たぬということで、
TPP合意は評価しているんですが、著作権分野は懸念大です。 TPP著作権分野の合意内容は、アメリカが望む保護期間延長、非親告罪化、法廷損害賠償の3点セット。いずれも提供側の保護強化を意味します。 これは、利用側の効用を下げることにつながります。 これまで日本は、提供・利用のバランスをとって著作権制度を積み上げてきました。アメリカなどに比べると、利用者・消費者の利益に配意する仕組みでした。これが崩れます。 この決着は権利者にとってよい方向とみるむきもありますが、提供と利用のエコシステムが崩れると、長期的な文化の弱体化につながりかねません。提供側にとっても果たして朗報なのかどうか。冷静な分析が必要です。 そして、崩れるバランスを、国内制度で改めてどう調節できるか。重大な事態です。 ぼくはこれまで、保護期間延長より、非親告罪化のほうがクリティカルだと表明してきました。 保護期間延長は、コンテンツ
オレ著作権法の話、キライなんよ(。・_・。)ノ だって図書館業界にちゃんと議論できる人、いないんだもん(へんてこな形でなら山本順一の問題提起がオモシロではあるが)。 でもつい見かけちゃたったもんだから、書く(-∀-;) なんか数日前から「森の図書室」(渋谷)をめぐって法律論議があるみたいね。じつはこの業者を知った時から、ああこりゃあかん、貸出しは著作権切れの名作だけにするとか、なんとかせにゃあとは思ってた。 http://b.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/%E8%B2%B8%E4%B8%8E%E6%A8%A9/ でもだまってた。 さいしょに言ったように、著作権法のいまの議論が嫌いだからである。 法というのは厳密に正しく守りきれるものでは、本来ない 何年かまへ、文書館にかかわる著作権法の一部改正があったでしょ。文書にいっしょにまぜこぜである著作物だったら、見せたりして
目次(索引) ◆TPPと保護期間延長でどうなる日本の著作権!?(まえがき) ◆TPPと保護期間延長でどうなる日本の著作権!? ①(玉井克哉先生による趣旨説明) ◆TPPと保護期間延長でどうなる日本の著作権!? ②(福井健策先生による発表30分) ◆TPPと保護期間延長でどうなる日本の著作権!? ③(玉井先生による発表30分) ◆TPPと保護期間延長でどうなる日本の著作権!? ④(福井先生による再発表15分) ◆TPPと保護期間延長でどうなる日本の著作権!? ⑤(玉井先生による再発表15分) ◆TPPと保護期間延長でどうなる日本の著作権!? ⑥(ゲスト感想編) ◆TPPと保護期間延長でどうなる日本の著作権!? ⑦(質疑応答編) ◆TPPと保護期間延長でどうなる日本の著作権!? ⑧(まとめ&あとがき)
[玉井克哉先生の発表フェイズ(30分間)] 玉井:えー……。皆さんどうでしょう、先ほど私、「横綱と平幕」と言ったことに「こいつは謙遜してるんじゃないか」と思った皆さん、謙遜じゃなかったというのがよくお分かりになったかと思います。 今は「こいつ大丈夫かな」「土俵から逃げるんじゃないの?」と思われているかもしれませんが、いやまあそれは、期待は裏切りません(会場笑)。 ただしかし白鳳だって負けることはあるんですから、そこはやっぱり頑張っていきたいなと思っております。 (写真8) ◆米国がTPPで要求していることの整理 えー、お手元にいくつかスライドを用意したのですが、こういう時はせっかく会場に来ていただいた方用に、ここにないスライドを(サプライズとして)用意しておくものなんですが、あんまりそれをやると福井先生に怒られますから(会場笑)、今日は1枚だけです。 これですね。 なんのことはない、現行法
【前書きに代えて】 本エントリでは、日本を代表する著作権法のエース2名による討論をお届けします。中心議題は「TPPがもたらす日本の著作権法への影響(特に保護期間延長問題を中心に)」というものです。 以下ざっと、その話題について書いてみます。 (今回の討論に至る「経緯」をご存じの方、前置きなどいいからすぐに討論を読みたい方は、イントロ、もしくは目次にお進みください) まず、いよいよ本格交渉が始まったTPP(環太平洋経済連携協定)ですが、大手メディアでその進捗や交渉内容が伝えられるのは、今のところ自動車、コメ、農産物、医療の話題ばかり。 やっと最近になって、本日の主役のひとりである福井弁護士の活躍もあり、「知的財産権」もTPPの重要な論点のひとつだという報道を、チラホラとは申しませんが「チラ」くらいは見かけるようになりました。 小説、マンガ、ゲーム、音楽、映画といった従来からよく知られている古
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