三菱総合研究所 理事長、小宮山 宏氏。専門は化学システム工学。2005年に東京大学の総長に就任。その後、2009年から現職。プラチナ構想ネットワーク 会長なども務めている。 『人類の足跡10万年全史』は、人類最大の発見の一つである“ゲノム”の研究成果を基にしています。私がこの本を気に入っているのは、ゲノムという新しいツールを使って、考古学や文化人類学などの成果と結び付けながら、人類史を再構築する壮大なストーリーを作っていくところです。まるで、シャーロック・ホームズが、さまざまなヒントを集めて事件を解決していく感覚に似ています。 科学者もこの著者のように、研究成果をつなぎ合わせて、全体を俯瞰した議論をする必要があるのではないでしょうか。学問の世界では、針の先をどんどん尖らせるように、細かいところへと突き進んでいかざるを得ません。これは、ある種の宿命です。しかし、そこから再び全体像を作る作業が