「興行収入250億3000万円」「観客動員約1900万人」という成績は、とてもピンとくる数字ではない。それでも、“大ヒット”という言葉を身をもって体験することがほとんどなくなった最近の映画館で、半年以上もロードショーが続けられ、多くの人が話題にあげていた。実に久しぶりに、“大ヒット”という言葉をまざまざと体感させられた作品、それが新海誠監督の『君の名は。』だったのだ。 すでに公開から1年半が経って、改めてなぜこの映画がこれほどの大ヒットを記録したのか考えたところで、その確たる答えというものは見つけようがない。 「面白い」からヒットするわけでも、「時代」に即していたからヒットするということも一概に言えない中で、まして新海誠という作家が前々から国民的人気を博していたわけでもない。そんなあらゆる謎があるからこそ、“社会現象”と呼ぶに相応しいのかもしれない。 そうは言っても、本作が極めて娯楽性の高