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ブックマーク / saebou.hatenablog.com (13)

  • 多角的な視点のドキュメンタリー~『春の画 SHUNGA』(試写) - Commentarius Saevus

    平田潤子監督『春の画』を試写で見た。春画に関するドキュメンタリー映画である。 www.youtube.com 春画がどういうものなのかについてのけっこうわかりやすい解説や、春画から影響を受けている現代のアーティストへの取材などもあり、多角的な作品である。エロティックな表現だけではなく、絵画技術の巧妙さについてもきちんと突っ込んだ説明をしている。基的には春画をセクシュアリティを楽しく描いた作品としてとらえ、その面白いところをポジティブに紹介しているのだが、一方で江戸時代の性差別的な社会が春画の背景にあることも指摘されており、やたらと日スゴイみたいな感じで女性を軽視して春画を持ち上げる作品ではない。このあたりは劇映画の『春画先生』よりも広い視点で作られており、そちらよりもだいぶ教育的で面白かった。

    多角的な視点のドキュメンタリー~『春の画 SHUNGA』(試写) - Commentarius Saevus
  • 始終つまんない人生よりも、一時だけでも本気で楽しいほうがいいよね~木ノ下歌舞伎『勧進帳』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    杉原邦生演出、木ノ下歌舞伎『勧進帳』を見てきた。山伏一行に返送した源義経と武蔵坊弁慶たちが関所を通ろうとしていろいろ機転をきかせる有名な『勧進帳』の話を現代化したものである。2010年に最初に制作し、2016年に変更を加えて再度作っており、今回のバージョンはその再演である。 少ないキャストで、関所の番人と義経一行の台詞が少ないメンバーは1人2役である。ラップやダンスが入り、最後にはスナック菓子も登場するモダンな演出だ(PARCO劇場の『新ハムレット』でもラップがあったが、このところ流行っているのだろうか)。笑うところもけっこうあり、メリハリの効いた演出だ。武蔵坊弁慶(リー五世)は巨体でいかついのだが、小柄な源義経(髙山のえみ)に寄せる忠義心には非常に優しいところがあり、そのギャップが面白い。 この作品で面白いのは関守である富樫左衛門(坂口涼太郎)の心境の変化である。富樫は最初のほうはいつも

    始終つまんない人生よりも、一時だけでも本気で楽しいほうがいいよね~木ノ下歌舞伎『勧進帳』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    egamiday2009
    egamiday2009 2023/10/19
    “私たちは他の大事なことをほっぽり出して、2時間くらいみんなで楽しむためだけに劇場に来る。たぶんそうしたほうが人生が楽しいからだ”
  • ウィキマニア2022東博エディタソンを実施しました - Commentarius Saevus

    11日から始まるウィキマニア2022のプレカンファレンスイベントとして、東京国立博物館でGLAMウィキペディアエディタソンを実施しました。3年くらいあたためていた企画で、新型コロナが悪化してずっとのびのびになっていたのですが、今回ウィキマニア2022で対面のローカルブレイクアウトとしてやっと実施できました。おそらく上野の博物館・美術館でウィキペディアエディタソンをやったところはこれまでないと思いますし、こういう大きな国立文化施設での実施も日語版でははじめてではないかと思うので、実現して当に嬉しいです。新型コロナウイルス対策で非常に少ない人数での実施となりましたが、できれば継続的にいろいろな博物館・美術館でGLAMエディタソンをやりたいと思っています(ホストしたいという施設を募集中です!)。 ja.wikipedia.org 私は上村松園の焔 (絵画)を立項しました。1918年の絵で、嫉

    ウィキマニア2022東博エディタソンを実施しました - Commentarius Saevus
    egamiday2009
    egamiday2009 2022/09/04
    「できれば継続的にいろいろな博物館・美術館でGLAMエディタソンをやりたい」
  • 不在の中心としての家事~『ザ・ウェルキン』 - Commentarius Saevus

    シアターコクーンでシス・カンパニー『ザ・ウェルキン』を見てきた。ルーシー・カークウッドの新作の日初演で、加藤拓也演出である。新型コロナウイルス濃厚接触者が出て休演があったが、再度上演できるようになった。 舞台は1759年のイングランド、サフォークの田舎町である。11歳の少女を殺した罪で死刑を宣告されているサリー(大原櫻子)が妊娠しているかどうかを判断するため、助産婦のエリザベス(吉田羊)をはじめとする12名の既婚女性が陪審員として集められる。女たちがサリーの妊娠について議論するうちに、さまざまな秘密が浮かび上がり始める。 冒頭以外は裁判所の1室で展開されるという点で『十二人の怒れる男』に似ているのだが、ここに出てくるのは20世紀の男たちではなく、家事で手一杯の18世紀の女たちである。この作品における不在の中心とでも言えるようなものは家事であり、女たちは陪審員としてのつとめを果たす最中も常

    不在の中心としての家事~『ザ・ウェルキン』 - Commentarius Saevus
    egamiday2009
    egamiday2009 2022/08/17
    “医学の発展が多くの妊産婦を救った一方で助産婦という専門家女性が権威のない立場に追いやられていく過程を示唆している。”
  • 「大学のハラスメントを看過しない会」のインタビューを受けました - Commentarius Saevus

    「大学のハラスメントを看過しない会」のインタビューを受けました。早稲田大学で起こったハラスメントに関する活動をしている方々のウェブサイトです。インタビューは三部構成です。 dontoverlookharassment.tokyo dontoverlookharassment.tokyo dontoverlookharassment.tokyo

    「大学のハラスメントを看過しない会」のインタビューを受けました - Commentarius Saevus
  • 地方自治体と国家~『ボストン市庁舎』(オンライン試写、ネタバレ注意) - Commentarius Saevus

    フレデリック・ワイズマンの新作『ボストン市庁舎』をオンライン試写で見た。 cityhall-movie.com ワイズマン流のフライ・オン・ザ・ウォール(壁のハエ)方式でひたすらボストン市の行政を取り続けたもので、4時間半くらいある。市民生活のあらゆる課題が出てきており、気候変動対策の港湾強化、住宅問題、ゴミ処理やネズミ駆除などの公衆衛生、ラティンクスなどマイノリティのキャリアと雇用、ホームレス支援、銃撃事件みたいな課題の解決から、記念日に行われる退役軍人イベントやボストン・レッドソックスの優勝お祝いパレードみたいな市民の交流行事の調整まで、とにかく市が処理しないといけないことが次から次へと出てくる。これを市のトップと市民たちの意見交換を通して改善していくということで、時間も手間もかかるのだが、これこそ民主主義なんだな…と思わせてくれるところがたくさんある。 ワイズマンの映画としては珍しく

    地方自治体と国家~『ボストン市庁舎』(オンライン試写、ネタバレ注意) - Commentarius Saevus
  • ほのぼのオタク語りが怒濤の展開へ~『レンブラントは誰の手に』 - Commentarius Saevus

    『レンブラントは誰の手に』を見てきた。レンブラントの絵画をめぐるドキュメンタリー映画で、監督は『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』と『みんなのアムステルダム国立美術館へ』を撮ったウケ・ホーヘンダイクである。 www.youtube.com 最初はレンブラント大好き人間たちが出てきて、自分のお気に入りのレンブラントの絵画に対するおのろけを語るというほのぼのしたオタク語りみたいな雰囲気で始まるのだが、主要登場人物のひとりである美術商のヤン・シックスが競売でレンブラントの真作であるかもしれない絵画「若い紳士の肖像」を見つけたあたりから話がどんどん大変な方向になっていく。ヤン・シックスの家にはレンブラントがご先祖を描いた絵があり、シックス家はアムステルダムでは有名な名家なのだが、ヤンは家名にのっかるだけではなく自分の鑑識眼を証明したいと、けっこう野心的にレンブラントの新発見作について調査を行う

    ほのぼのオタク語りが怒濤の展開へ~『レンブラントは誰の手に』 - Commentarius Saevus
  • 佐藤由美子さんの「日本語版ウィキペディアで「歴史修正主義」が広がる理由と解決策」について - Commentarius Saevus

    ここ数日よく読まれているらしい、佐藤由美子さんの「日語版ウィキペディアで「歴史修正主義」が広がる理由と解決策」というエントリを読みました。こちらは月末の学会で発表するための準備のようなものだということです。 yumikosato.com こちらについて、日語版ウィキペディアに歴史修正主義がはびこっているとか、間違いだらけだということについては私もとくに異論はないのですが(間違いだらけで信用できないということは私もメディアに出るたびに言っているし、できるところは対処してます)、いくつかけっこう大きな事実誤認や、ウィキペディアの手続きに関する理解不足と思われるところがあります。ブログのコメント欄に書いて指摘したのですが、スパムフィルタか何かに引っかかったのか反映されていません。学会で発表するということであればウィキペディアじたいの仕組みについて誤解があるままだとあまり良くないだろうと思うの

    佐藤由美子さんの「日本語版ウィキペディアで「歴史修正主義」が広がる理由と解決策」について - Commentarius Saevus
    egamiday2009
    egamiday2009 2021/01/18
    “学会で発表するということであればウィキペディアじたいの仕組みについて誤解があるままだとあまり良くないだろうと思うので、…改善できそうなところについて、コメントをしておきたい”
  • 来学期から東京大学非常勤を辞めることになりました - Commentarius Saevus

    今年で東大駒場の非常勤講師を辞め、1年間実施した英日翻訳ウィキペディアン養成セミナーは来年から務校の武蔵大学に移すことになったのですが、この辞職とクラス移動の経緯について皆さん興味があるらしいので、学生に迷惑がかかるなどの差し支えが無い範囲で簡単に説明しようと思います。めちゃめちゃ長いので、イントロのあと3つの節に分かれています。 ・イントロ まず、私は2013年に留学を終えて日に帰ってきてからずっと東大駒場で英語の非常勤をしており、最初の二年は英語一列、今年は実験的な科目としてウィキペディアン養成セミナーをやっていました。学部から博士の一年まで東大駒場に所属していたので、英語一列には院生の時からTAとして関わっていました。去年からは武蔵大学に専任講師として就職したので非常勤先は辞めても良かったのですが、図書館とデータベースが使えること(これは研究者にとっては大変大事で、給料なんかより

    来学期から東京大学非常勤を辞めることになりました - Commentarius Saevus
    egamiday2009
    egamiday2009 2015/12/22
    これはほんと困る
  • 日本からアメリカへ旅する本たち〜『書物の日米関係―リテラシー史に向けて』 - Commentarius Saevus

    和田敦彦『書物の日米関係―リテラシー史に向けて』(新曜社、2007)を読んだ。 書物の日米関係―リテラシー史に向けてposted with amazlet at 14.03.09和田 敦彦 新曜社 売り上げランキング: 908,375 Amazon.co.jpで詳細を見る 戦前から戦後くらいまで、日からアメリカに渡った書籍と、アメリカにおける日教育の変遷を組み合わせながら、書物史(書ではリテラシー史という概念が使われている)的観点で日米関係史を読み解いていくというである。割合広い話題をカバーしているので、書物史の人はもちろん、日米関係や日教育歴史に興味がある人にはものすごくオススメのである。 とりあえず日(に限らず東アジア諸国)からアメリカに渡ったというのは文字体系が違いすぎて目録を作ったり配架を考えるだけで一苦労だそうだ。たしかに、司書は漢字がわかるとしてもいったい

    日本からアメリカへ旅する本たち〜『書物の日米関係―リテラシー史に向けて』 - Commentarius Saevus
  • たいへん日本ふうなSFとしての『図書館戦争』 - Commentarius Saevus

    図書館戦争』を見てきた。あまり期待していなかったのだが意外と面白かった。留学する前にわりと夢中になって原作を読んでいたのだが、映画で見て思ったのは、この作品は実に和製SFだということである。 まず、基設定として図書館関係法規とメディア良化法が相互に矛盾をきたしているのになぜか双方の馴れ合い?でその矛盾が解決されておらず、良化委員会と図書館が双方ミリシアというか法人の軍隊というかなんというかを持っているということになっているのだが、司法の権限が強い国でこの設定にリアリティを持たせるのは無理だろうと思う。英米なんかだと法と法が矛盾してるとなれば裁判が多発しまくって少なくとも法同士の整合性が保たれる形に修正されるだろうし、たぶんそのせいで英米のディストピアSFってかなり一貫性のある法体系が一般市民を抑圧している、という設定が普通だと思う。しかしながら日だと司法の権限があまり強くないし、法の

    たいへん日本ふうなSFとしての『図書館戦争』 - Commentarius Saevus
  • さかのぼるって何?文学や映画における、時間が過去から未来に直線的に進まない作品のタイプ分類 - Commentarius Saevus

    第七回歴史コミュニケーション研究会に出席した。 報告内容についてはこちらとかこちらで既に詳しい説明があがっているからいいとして、私が気になったのは第二部「さかのぼり世界史A」である。というのも、なんか普段文学や芝居、映画のナラティヴに触れている人にとっては「さかのぼり世界史」は当はさかのぼってないんじゃないかという疑惑があり、実は初めての査読論文が小説をタイムラインに起こしてみるというものだった私にはなかなか気になるところで…と、いうわけで、独断と偏見で「時間が過去から未来に直線的に進まない作品のナラティヴ分類」を今後のためにやってみようと思う。こういう時系列の分析って読解テクニックとしてけっこう文学や映画の人は学校で習ったりふだんの経験で身につけたりするんだけど、いい参考文献見つからなかったので何も見ないで自分の手業で書いてるからちょっと不適切なところがあるかも…いい文献あったら誰かコ

  • 舞台、観客、その間にある権力〜バナナ学園問題から考えたこと - Commentarius Saevus

    えーっと、一昨日くらいから演劇クラスタを騒がせているバナナ学園問題というのがある。これはバナナ学園純情乙女組というカンパニーが王子小劇場で行った「翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)」という公演において、男性パフォーマーが観客の女性の胸などを同意を得ずに触り、自分の下半身が触れるような状態で性行為の真似をする行為を行ったということがツイッターで報告された、という問題である。 私はもちろん公演は見られないので(1万キロ離れている)、基情報はツイッターや劇場のウェブサイトから得た。 発端となったtogetterまとめの魚拓(タイトルが扇情的なので書きません) 残っている短縮版のまとめ「バナナ学園に関して」 消される前のおおもとのtogetterのはてブ このあたりまではウェブ上で流れている情報だけで真偽不明なとこがあったのだが、ハコである王子小劇場ウェブサイトにも情報

    舞台、観客、その間にある権力〜バナナ学園問題から考えたこと - Commentarius Saevus
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