疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。それでリモートワークが定着してしばらく経ち、出社時のコミュニケーションもだいぶ電子化された。そのためにわたしはものすごくほっとしている。渡邉さんからの働きかけが激減したからである。 渡邉さんはわたしの部下である。以前の上司から「うまくやるのはたいへんだと思う」と聞いてはいた。高圧的なのか仕事ができないのか、そんなところだろうと思っていたら、そうではないのだった。渡邉さんはある意味でとても正しいのである。そして正しさで管理職のリソースを取れるだけ取ろうとする人なのだった。 渡邉さんは管理職のミスを指摘する。渡邉さんは高圧的な話し方はしない。ただし話が長い。自分がなぜそれを指摘するのか、本来はどうあるべきなのか、そこから外れることが部下や会社にどういったダメージを与えかねないか、延々と話す。遮ると管理職が部下の指摘を遮ること