【ベルリン=宮本隆彦】ヒトラーが率いる国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)が政権を掌握してから八十年がたった三十日、メルケル首相は、当時の国民の多くがナチスを支持したり容認したりしたことを指摘し「社会が無関心になれば現代でも起こり得る」と述べ、偏狭な国家主義や人種差別と闘い続ける必要性を説いた。 ベルリンの秘密警察(ゲシュタポ)本部跡地に設けられた施設では「独裁への道」と題する特別展が始まった。開会式でメルケル首相は「人権や自由、民主主義は自然に存在するのではない。互いに尊敬しあい、批判や反対意見を受け入れる人びとが必要だ」と述べた。 ナチスは経済の混乱を背景に、一九三二年の総選挙で第一党に躍進。ヒトラーは三三年一月三十日、大統領から任命され首相に就任した。同年夏にはナチスを唯一の合法政党とするなど次第に独裁体制を固め、三五年にユダヤ人から市民権を奪う人種法を制定。ユダヤ人を絶滅させるため