1989年に、私はすでに朝日新聞の政治部記者だった。持ち場は野党担当で、もっぱら国内政治を追っていた。7月の参院選は、土井たか子委員長が率いる社会党の空前のブームで、自民党は初めて参院で過半数を失った。のちの政治大変動の起点になる年だった。だが同時に国際情勢も揺れ動き、国内政治を取材している記者にも、それは日々伝わっていた。 1989年7月の参院選で社会党候補が続々と当選を決め、喜びの土井たか子社会党委員長(右から2人目)と山口鶴男書記長(左)=朝日新聞社撮影 6月4日の天安門事件は衝撃だった。人民解放軍による流血の弾圧は、中国共産党の統治とはいったい何なのか、という根本的疑問を生んだ。1972年の日中国交正常化以来、日本人の中にふくらんでいた中国に対する好意的イメージは、一気にしぼんでいった。 しかし、当時の実感としては、秋に始まった東ヨーロッパの社会主義体制の崩壊のほうが、はるかに大き