ところで、なぜ日本人が羊を飼うようになったのか。 そして、なぜ今も羊を飼っているのか。 この問いはとても深く、容易に答えることはできません。 これまで下総の牧場の羊について書きながら、そのことを繰り返し考えてきました。 出会う羊飼いに、なぜ羊を飼っているのかを聞くようにしました。 みんなそれぞれの理由があり、「自分でもなぜか分からない」という答えもありました。 私の知る限り、18世紀以前の日本において羊がうまく繁殖したことを示す記録は見られません。 江戸時代の国学者の書物の中には「皇国に羊なし」とさらりと書いたものも見られます。 海外からもたらされる知識には、羊という動物が要所で出てくるのに、実物の羊は見たことがなく、どんなものか分からない。 でも、言葉では「ひつじ」と知っている。 それが18世紀までのほとんどの日本人にとっての「羊」だったと思われます。 一方、中世の南蛮貿易で「ラシャ」と