あなたが見ている空の青さと、わたしが見ている空の青さが同じとは限らない。同じ波長の光が網膜に届いているとしても、その刺激が他人の中でどのような知覚をつくりだしているかを正確に知る術はなく、今あなたの目の前に広がる世界は、あなただけの世界かもしれない。 ヒトはどのように世界を見ているのか。 ヒトはどのように世界と繋がっているのか。 本書はこの捉えどころのない問いに、心理学はもちろん、生物学に哲学、さらにはロボット工学を交えながら挑んでいく。コオロギの驚くべき求婚能力が紹介されたかと思えば、アフォーダンスの哲学的考察へ至る本書の展開は、さながら知のジェットコースターのよう。振り幅が大きく、猛スピードで進んでいくが、確実に我々を目的地へと連れて行く。そして、このジェットコースターは、チンパンジーの事例からスタートする。 ある動物園で暮らすサンティノという名のチンパンジーは、ちょっと変わった日課を