ドイツ西部のビーバータールにある養殖施設の医療用ヒル。(PHOTOGRAPH BY TIM WEGNER, LAIF/REDUX) 滑膜肉腫という珍しいがんがある。皮下組織や筋肉などから発生するこのがんにかかったエリー・ロフグリーンさんは2022年の夏、米ユタ大学病院で手術を受けた。ひざの関節にできていた腫瘍を取り除き、骨やひざの筋肉の一部も切除した。代わりに金属製のインプラントを埋め込み、それを覆うように上ももから筋肉と皮膚を移植した。しかし数時間後、組織片が紫色に変わりはじめた。移植した組織が壊死(えし)しつつある兆候だ。 移植片を救うことが何よりも重要だったため、医師たちは驚くべき方法を提案した。それがヒル治療だ。 「本当にびっくりしました」と米アイダホ州在住で31歳のロフグリーンさんは振り返る。「最初に聞いたときは、それだけは勘弁して、と思いました」 気持ち悪さは別にしても、現代医