先が見えないコロナ禍の2021年(令3)、俳優田中邦衛さん(享年88)は3月24日に老衰で、この世を去った。12年に親友だった地井武男さんの「お別れの会」に出席後は、公の場に姿を見せることはなかった。邦衛さんの代表作となったフジテレビ系ドラマシリーズ「北の国から」(81~02年)の脚本家倉本聰さん(86)を、冬の北海道・富良野に訪ねて、その思いを聞いた。【取材・構成=小谷野俊哉】 ◇ ◇ ◇ 妻と別れて2人の子供、純と蛍を連れて電気も水道も通らない故郷の北海道・富良野へ帰る男-。倉本さんは、「北の国から」の主人公・黒板五郎に、邦衛さんを選んだ。 「6人ばかり候補がいたんです。高倉健さんも、そうだったし。それから中村雅俊、藤竜也、西田敏行もいましたね。その中に邦さんが入ってた。この中で一番情けないのは誰だろうっていう話になったら、間違いなく邦さんだと。それで邦さんになっちゃった。この