「嗅覚をよりポジティブにサービス展開していくことで、五感をバランスよく使うことにもつながります」 嗅覚感覚の全容解明と社会実装には、あと10年はかかりそうだという。 ■遠隔地で匂いを再現 通販で商品の香りを嗅ぐ 遠隔地で匂いを再現するシステムの開発に取り組むのが、東京工業大学の中本高道教授だ。 匂い分子は嗅覚細胞にある嗅覚受容体と結合する。その結果、受容体が活性化され、嗅覚細胞の内と外の間に電位差が生じ、匂いの電気信号として脳へ運ばれる。この匂い分子ごとに異なる応答パターンを脳の中で認識し、どのような匂いかを識別すると考えられている。 中本教授は脳の神経回路の一部を模した数理モデル(ニューラルネットワーク)を用いて応答パターンをデータ認識し、匂いの識別を行うセンシングシステムを開発してきた。いわば嗅覚のデジタル化だ。 ただ、世の中に存在する匂い分子は膨大になる。そこで、匂いを構成する基礎に