愛犬や愛猫と話してみたい、と思ったことがある人は多いだろう。ビッグデータやAI(人工知能)の技術が長足の進歩を遂げた今、人間と動物が「話す」日は近いのかもしれない。 本書『クジラと話す方法』(杉田真訳)は、人間と動物、とくに鯨類が「話す」可能性について、最新の研究や取り組みを紹介。人間とクジラとのかかわりの歴史、動物のコミュニケーションをめぐる最新の知見など視野を広くとった上で、高度な技術の恩恵だけでなくリスクや倫理的課題にまで踏み込んだ知的冒険の書である。 著者のトム・マスティル氏は元生物学者で映画製作者兼作家。人間と自然が出会う物語を専門とし、数々の国際的賞の受賞歴をもつ。 クジラは何を話しているのか 著者がクジラとのコミュニケーションに興味を持ったきっかけがある。2015年、カリフォルニア沖のモントレー湾でカヤックをこいでいた時、突然海面に飛び出たザトウクジラが彼のカヤックの上に落ち