待ち焦がれた塀の外に出てみれば、独居房で増えた独り言が抜けず、小さな物音にも目を覚まし、コンビニの女性店員とはまともに会話ができない-。刑務所に長期間服役した元暴力団組員の社会復帰をテーマにした9月発売の小説「ムショぼけ」(小学館文庫)が翌10月にテレビドラマ化され、話題を呼んでいる。元組員でかつて服役した沖田臥竜(がりょう)さん(45)が自身の体験をもとに、原作を手がけた。出所直後の戸惑いや逆境をリアルに表現する一方、人間関係の中で希望を見いだす主人公の姿を前向きに描いている。 妻子とは音信不通に…「ムショぼけ」とは、自由を制限された刑務所で長期間過ごした人が、社会の環境の変化やスピードに合わせることができない現象をいう。 「受刑者は長い刑務所暮らしで塀の外の暮らしに夢を膨らませるが、出所してすぐに現実を突きつけられる」(沖田さん)。暴力団組織の指示で殺人未遂事件を起こし、懲役14年の刑