特定のにおいだけを感じない「特異的無嗅覚症」 Charles J. Wysocki 今回のテーマは、嗅覚の個人差です。身近なレストランでの食事風景を例に、感覚の意外な盲点をご紹介します。モネル化学感覚研究所のチャールズ・ワイサキ教授に書いていただきました。 特異的無嗅覚症とは? 特定の色に対する感覚が弱い色覚異常があるように、嗅覚にも、他のにおいに対しては通常の嗅覚がありながら、特定のにおいだけを感じない(または感度が低い)感覚的な「死角」が存在します。このことを、専門用語で「特異的無嗅覚症(Spesific Anosmia)」といいます。 特異的無嗅覚症は、本人が自覚していない場合もあります。食べ物や飲み物の味や香りを、大多数の人に魅力的に感じさせる重要な化学物質があるとします。その物質の香りを知覚できない人は、なぜ他の人が「おいしい」と絶賛しているのか理解できないでしょう。また、飲食物