ランドマーク商品という言葉がある。これはヒットし、ロングセラーになるだけでなく、人々の生活様式や価値観を一変させるパワーをもつ商品を指す。 この日本発のランドマーク商品の筆頭に挙げられるインストタントラーメンは、今や国民食から世界食・宇宙食となった。その生みの親、安藤百福の伝記や語録などを収めた本書は「転んでもただでは起きるな。そこらへんの土でもつかんで来い」という精神で駆け抜けた起業家の生涯とともに日本近現代の歩みが二重写しとなってくる。 植民地だった台湾に生まれた百福は、二十二歳でメリヤス販売会社を起こし、戦時中は機械部品・幻灯機・バラック住宅などを扱う。戦後は塩・栄養剤を製造し、信用組合の理事長となって破産。その間には憲兵隊で拷問にあい、脱税容疑で巣鴨プリズンに約二年間収監される。 そして、安く、うまく、衛生的で保存性と簡便性がある商品として、一九五八年にチキンラーメンを発売。この年