第一の転換、自由な市場経済のシステムとしての自立においては、公共圏と私的領域との区別は未だ物理的、空間的な性格を失ってはいない。商品経済という新たな領域がその間に、これもまた物理的、空間的な実体としてさしはさまる、という理解ができなくはない。そして公共圏と私的領域との間の境界は、なお保たれる、と。 人々の生存、私的生活は、もともと本当はそうだったのかもしれないが、市場経済の発達の下、もはや自給自足としてはあり得ない。しかしながら市場を介することによって、人々は他人との取引をコミュニカティブな「政治」として行う負担を大幅に軽減される。あたかも自然法則に従うかのごとく、第二の自然と化した市場経済の「見えざる手」に導かれて、公的な場で他人とかかわり合いつつもひたすら私的な利害だけを追求していくことができる。市場は公共圏というよりも公共圏の代替物となっていく。 しかしながらなおそこでは、市場に出る