「第九軍団のワシ(“The Eagle of the Ninth”)」(1954)は英国を代表する児童文学作家・歴史小説家ローズマリー・サトクリフ(1920~1992)がローマ帝国時代のブリテン島の歴史を題材にして描いた、サトクリフ初期の代表作である。続く「銀の枝(”The Silver Branch”)」(1957)、「ともしびをかかげて(”The Lantern Bearers”)」(1959)、「辺境のオオカミ(”Frontier Wolf”)」(1980)はいずれも本作の主人公マーカス・フラビウス・アクイラの末裔たちを主人公にして描いており、あわせて「ローマ・ブリテン四部作」と呼ばれている。 サトクリフは本作を執筆する上で二つの歴史をもとにしたという。第一に、ブリテン島に配置されたローマ帝国の第九軍団ヒスパナの消滅である。第九軍団はカエサルによって創設され、ブリテン島が支配下に入っ