我々が笑うとき、それが架空の話でも笑う。漫才とかジョークとか、むしろ空想のバカ話として笑うことが本義かもしれない。ところが、怒りは違うのではないか。自分の日常であれテレビのニュースであれ、ムカっとくるときそこには必ず事実がある。怒りを向ける人物や状況が実在する。 漫才はもともと怒りを誘うものではないが、たとえば小説や映画でどれほど怒るべき出来事が生じても、鑑賞している我々が本気で怒るということは、ないように思うのだ。 夢でシミュレーションするといいかもしれない。 たとえば山崎努が私の上司で私をいびってばかりいる。むかむかする。でもやがて目がさめる。なんだ夢か。そうするともう腹立たしくはない。では、夢で山崎努がバナナの皮ですべってころんだらどうか。大いに笑う。そしてまた目がさめる。でもこんどは思い出しても同じように笑える。すべってころんだのがウルトラマンであってもツチノコであってもだ。実在の