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心理と恋愛に関するkousyouのブックマーク (9)

  • 憎しみを捨てる - 傘をひらいて、空を

    うちの男の子がねと彼女は言う。彼女には三歳の男の子がいるけれど、その子のことはそう呼ばない。武生がね、と言う。うちの女の子、というときも同じだ。彼女に娘はいない。うちの男の子がね、同期が結婚しちゃってつらいみたいで、ああその同期の女の子を好きだったわけ、だいぶがんばって、でも学生時代からの彼氏に勝てなかったみたい、それで、殴る夢を見るというの。 彼女の話はよく跳躍するので私は好きだ。少しわかりにくいけれど、速度の感覚がある。わかりやすさなんかたいしたものではない。わかりやすさのために話を聞くのではない。快さのために聞くのだ。 その好きな人を殴る夢を見る部下って、よく相談に来るの。私がそう訊くと彼女は首をかしげる。ほかの子はいろいろ相談してくるけどあの子はしないな、でも今回は、なんていうのかしら、まだ仕事に支障は出てないんだけど、たぶん持ち帰ってどうにかしてるんじゃないかと思うんだけど、半分

    憎しみを捨てる - 傘をひらいて、空を
  • 恋愛的疑惑と少量の善良 - 傘をひらいて、空を

    ミエちゃんが俺とつきあえるとか思ってたらどうしようと彼は言い、人に訊けばいいじゃんと私はこたる。彼は眉を歪め、野菜を鍋に放りこむ動作と同じ速度で言葉を投げる。マキノってなんでそんなに言語コミュニケーションを信じきってるわけ、この世がそんなに簡単にできてるわけないだろ、あの子たち返事しないでさめざめと泣くからね、しつこく泣く、俺はムツゴロウさんみたくひたすらなだめる、そして夜が明ける。あれはきつい。 なるほどと私は言い、長い箸を動かして鍋底から奇妙なかたちのきのこを救出する。中国人の店員さんが美味しいですよと言っていた。鍋は曲線で仕切られ、赤白二色のスープに大量のスパイスが浮き沈みしている。 薬膳っぽいものべようと彼が言い、私たちはここに来たのだった。繁華街の奥のこのあたりでは深夜まで平然と事が供され、周囲のことばの半分が日語でない。 ミエちゃんは彼の同僚だ。美人じゃないけどなかなか

    恋愛的疑惑と少量の善良 - 傘をひらいて、空を
  • 一、連れて帰る  二、せせら笑う - 傘をひらいて、空を

    三年くらい集まってないよねえ。私が訊くと彼は、誰かの結婚式に便乗するチャンスがなかったんだよ、と言った。私たちは大学のときの講座が同じで、二十代まではおおよそ二年に一度の割合で顔を合わせる機会があった。 機会があった、というのは私のように受動的な人間の物言いで、たいていは電話の相手の彼が声をかけて集めてくれていた。私は同期生の名前を出し、こないだ一緒に旅行に行ってね、と言った。相変わらず仲いいのなと彼は言った。 彼は人当たりがよく頭の回転もなかなかに速く、いろいろなタイプの相手に如才ない会話を提供することができた。そういう人間はある程度の年齢になればしばしば見られるけれども、二十歳のころからうまくやれる人は珍しい。整った顔だちで着るものも気が利いていたから(とにかく全方位的に気が利いているのだ)、女の子たちにも人気があった。 けれども私は彼が少し苦手だった。彼の物言いからは時折、彼が持って

    一、連れて帰る  二、せせら笑う - 傘をひらいて、空を
  • ごはんつぶ離別 - 傘をひらいて、空を

    いいねえ、なんかこう、立派っぽい理由があって別れててさあ。彼女がそう言うので私は驚いた。語っていた友だちもびっくりして、ひとつも立派じゃないよと言った。 いや立派だね、私が同棲三ヶ月で別れたときに比べたらはるかに立派だねと彼女は言う。立派じゃないって、どんな理由で別れたの、あなたたちは。私がそう訊くと彼女はなぜかいばって、ごはんつぶ、とこたえた。 一緒に住んでたら、事もよく一緒にするでしょ。そしたら彼はごはんを残すわけ。残すっていうかお茶碗に何粒もはりついてる状態でごちそうさまなわけ。いやじゃない、それって。 私は少し思案してこたえる。私は米粒は残さない習慣がついてるけど、人によって作法は違うし、そんな気にするほどのことじゃないと思うよ。彼女はそうでしょうそうでしょう私も最初はそう思ったの、と勢い込んで言う。 でもだめ。なんかもう、がまんしてるとこっちがごはん入っていかなくなる。またあの

    ごはんつぶ離別 - 傘をひらいて、空を
  • 私を非難しないで - 傘をひらいて、空を

    うん別れた、たぶん。彼女はそう言い、たぶん、と私は訊きかえす。彼女はうなずく。私は考えながら質問する。 私のささやかな経験によれば、別れっていうのはそういう曖昧なものではなくって、いわゆる別れ話をして荷物をまとめて、持っていたら合い鍵を置いて、一緒に撮った写真を眺めて涙する、みたいな、そういう明瞭なものではないの。 それどっちかっていうと離婚じゃない、と彼女は訊く。私は少しはずかしくなって、結婚の経験はないよとこたえる。彼女はなぜだか数秒のあいだ笑って、あなたと私では彼氏の定義がちがうんじゃないかなと言う。私、彼の家に行ったことない。写真も持ってない。彼は私を撮ってたけど。別れ話っていうのもよくわからない。どっちかが別れる気になったらそれでおしまいなのに、何を話すの。 私は衝撃を受けて少しのあいだ口を利けないでいた。ひとつずつ質問しよう、と思う。まずおうちについて。どちらかの家によく行くの

    私を非難しないで - 傘をひらいて、空を
  • 憎しみ鏡 - 傘をひらいて、空を

    私は彼を見る。ふつうの男の人、と思う。こぎれいで気が利くけれど、強烈な引力みたいなものはない。世の中にはびっくりするくらい頭が切れる人もいるし、からだつきや所作に色香のある人もいる。輝くように華やかな容姿の人や、仏像のモデルにしたいような端正な人もいる。でも彼らはそんなにばんばん浮気しない。少なくとも彼のようには。 どうしてかなと私は言う。彼は首をかしげる。そうして言う。僕の浮気には二つの要因がある。 まず、環境の要因。女の子がそこらへんにいる。同じ会社にもいるし、派遣さんも来るし、社外での仕事もある。出会いがないってせりふ、あれ僕よくわかんないんだよね。たくさん声をかけると中にはふたりで会ってくれる人もいる。だからついねえ。 私はあきれて口をはさむ。彼女がいるのにいないふりをするのは「つい」じゃないよ、だましてるようなものでしょう、それは。 彼は上体を倒して上目遣いをつくり、きまじめだな

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  • 知人がストーカーになる過程を見せつけられた - coconutsfine's blog

    例えばあなたの理想の人物像があるとする。スポーツ万能、容姿端麗、何事にも優れた才能を発揮し、それにおごることなく常に前向きに努力するような人物像を思い浮かべるのだろうが、僕の知人たちは全員そんな人物だと思ってくれて良い。僕ももちろんそれに近い人物で、毎日知人たちとおしゃれなパーティーを開いている。 そんな知人たちの中のひとりがこの春に恋をした。仮にAくんとする。僕らのグループは基的に女に縁が無く、万が一にでも彼女ができようものならば「団体行動を乱すな!!」と罵倒される。Aくんはその中でも最後の砦と目されるほど女に関しては安全牌で、Aくんがいるからこそみんな安心して世の中の男女情報に振り回されることなく孤高を邁進していた。そんなさなかでのAくんの恋愛相談である。うざい。 Aくんは3月末頃から兆候を見せ始めていた。mixiに「女の子とデートに行ってきた」だの「もっと優しくできたはずだったのに

    知人がストーカーになる過程を見せつけられた - coconutsfine's blog
  • 「ダメな俺を丸ごと受け止めてくれ症候群」のメカニズム - シロクマの屑籠

    ダメな俺を丸ごと受け止めてくれ症候群 リンク先のはてな匿名ダイアリーの記事が、色々と示唆的だ。「ダメな俺も丸ごと受け止めてくれ」、という三十代オタク男性に、女性の側が当惑し、到底引き受けられないと結論づけるまでのいきさつが記述されている。 くだんの三十代男性は、女性側が未だ好きとも嫌いとも、付き合うとも付き合わないとも判断しきっていない段階で、いきなり自分のダメな所を延々と語り始めたわけである。これは、例えば「合コン」「お見合い」などの場ではありうべからざる、交際前段階のコミュニケーションとしては非合理的な振る舞いのようにみえる。自分が職場で活躍している武勇伝でも話したほうが、まだしも効果的かもしれない。 にも関わらず、異性にアプローチするなかでのダメ語りというのは、意外と耳にすることがある。何故、付き合ってもいないうちから「ダメな俺も丸ごと受け止めてくれ」と言い出してしまうのか?私は、非

    「ダメな俺を丸ごと受け止めてくれ症候群」のメカニズム - シロクマの屑籠
  • 彼女からの年賀状 - 花房観音  「歌餓鬼抄」

    毎年送られてくる一枚の年賀状がある。送り主はFという同級生の娘だ。普段は特に連絡をとることもないが年賀状だけは毎年やりとりしている。 Fは背が高く、おとなしく少し暗い雰囲気の娘だったが優しい娘だった。Fは自分が背が高いことと「私はブスだ」ということを気にしていた。確かに彼女は美人ではないけれども雰囲気の良い娘だしブスということはないと私は思っていた。 Fの出身中学は田舎の小さな学校だった。何故だかFだけは同じ中学出身の他の人達と行動を別にしていたし少し浮いているようだった。お互い嫌い合ってるというわけではないけれども何となくよそよそしかった。 ある日、その理由をFから聞いた。 Fの中学は雪深い山にあるので、冬場は遠くの生徒は通学が困難なので学校に隣接している寮で生活をしていたのだ。その頃、Fは同級生の、ある男のことが好きだった。名をYとする。Yも同じ高校に来ていたので私も顔は知っていた。背

    彼女からの年賀状 - 花房観音  「歌餓鬼抄」
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