岩波の定番、一冊でわかるシリーズの一つだが、実はタイトルに反して古代ギリシャ・ローマの戦争は一冊でわからない。むしろ、この本を読む前に古代ギリシャ・ローマの戦争についての一般的な解説書を読んでおくと良いと思う。というのも、翻訳者が解説でも説明しているが、本書が目指しているのは、『従来的な軍事史の叙述ではなく、古代ギリシャ・ローマの「戦争の文化史」もしくは「戦争の社会史」の提示である』(P166)。つまり、ギリシャ・ローマの戦争についてその概要をコンパクトにまとめた概説書といったものではなく、別の切り口だ。 その切り口とは、古代ギリシャ・ローマの戦争について、西洋史上語り継がれ、「実体」として信じられてきた,古代ギリシャ以来、「戦争の西洋的流儀(Western Way of War)」が確立され現代まで脈々と西洋の戦争を特徴づけている、とする説への批判である。 「戦争の西洋的流儀」とは何か。