拙著『国家神道と日本人』(岩波書店、2010年7月)については、分かりやすい本だったという感想を多くちょうだいしましたが、他方で著者の意図がよく分からないといった類の感想にもしばしば出会いました。 これはこの書物が政治的な主張に主眼を置いたものではなく、数十年単位の長期的なスパンで通用する宗教史理解を示そうとしたため、また新書という形態の都合上、現在通用している理解に対してどこに革新性があるかを分かりやすく提示しなかったことによると思われます。 来年中に刊行を目指している国家神道研究の研究書においては、そのあたりをもっと明確に示すつもりですが、ここでこの本の革新性の概略についてまとめておきたいと思います。参考にしていただければ幸いです. (1)皇道論の系譜として水戸学、津和野国学、そして長谷川昭道を関連づけ、そこから「大教宣布の詔」、および「教育勅語」が出て、ある種の寛容性をもちつつ、諸宗