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読み物と生活に関するkousyouのブックマーク (7)

  • 川上弘美:東京日記 : ノンノン。

    四月某日 晴 美容院に行って、前髪を切る。  前髪をつくるのは、久しぶりである。 はなやいだ気持ちになって家のそばを歩いていたら、知人に会う。 「おっ、前髪が」  と言われ、ますます自慢な気持ちになる。 「その前髪、ムーミンに出てくるノンノンですね」  知人は続けた。  ノンノン?  あの、世にも浮き上がっている前髪の、あのひと?  がっくりきて、そそくさと家に帰り、ふとんにもぐりこむ。すぐにでも前髪をなくしたくなるが、後の祭である。 四月某日 晴 前髪のことが気にかかりつつ、新刊のインタビューを受ける。  後日、そのインタビューの載った誌面を見た友だちから、電話。 「なんか、顔がむくんでない? 病気? 心配だよ」  ぜんぜん病気ではないし、顔のむくみも、五十歳過ぎてからはいつものことである。  すると、知人の言った「ノンノンのよう」というのは、もしかして前髪が似合っていないことをさした

    kousyou
    kousyou 2012/06/09
    今月分は抜群の面白さ
  • 私家版・ぼんやりの時間 - 2010-06-03 - ぼんやり上手

    岩波新書から『ぼんやりの時間』というが出ていると聞きました。親近感のわくタイトルなので、読んでみたいと思っています。 でも「ぼんやりの時間」って、そもそもどんな時間なのでしょうね。おそらく以下のような時間なのではないかと私は考えました。 『私家版・ぼんやりの時間』 ぼんやりの朝は早い。意外と早い。 ぼんやり(以下BY)は朝の五時半にはぱちりと目が覚めて、ひとりでに自分の部屋から起き出してくる。起き出して何をしているのかというと、リビングのテレビでぼんやりと、早朝から再放送している『一休さん』を見るのだった。ぼんやりするためなら早起きも辞さない、それがBYだ。『一休さん』を観るBYは(桔梗屋の弥生さんと新右衛門さんが出てくる回はたのしいな)と思った。 早起きしているにもかかわらず、BYはいつも遅刻ぎりぎりに登校する。自分でも不思議だった。 歴史の授業は遣唐使のところだった。けれどもBYは授

  • 彼女の円い眠り - 傘をひらいて、空を

    彼女は山手線の大崎駅からいくらか歩いたところに部屋を借りている。彼女は夜遅くそこに帰ってゆっくりとお風呂につかり、少し眠って身支度をして早朝のうちに家を出る。 そしてまた眠る。山手線の中で、綺麗なグラデーションに塗ったまぶたを閉じて、ビジネススーツを着て、膝をきちんと揃えたままで。いちばんいい席は壁際で、そこでならいくらでも眠れるのだそうだ。彼女の頭は会社の最寄り駅のアナウンスをしっかり覚えていて、それが耳に入るときっちり起きて降りる。そのほかのアナウンスでは起きないのかと訊くと、不思議そうな顔をして、いいえ、ときどき寝入りばなや寝起きに聞くけれど、とてもいい気持ち、夢みたいにやさしい声、と言う。 どうして山手線なのと訊くと、彼女はごく当たり前のことを親切に教えるときの口調で、終点がないから、と言った。終点がなくって、遠くへも行かないから。私、電車のなかで眠るのが好きなの。電車の中では安心

    彼女の円い眠り - 傘をひらいて、空を
  • 「ふまじめな叔母さん」という役回り - 傘をひらいて、空を

    いとこがJICAに落ちてさあ、と彼女は言った。彼女の年下のいとこが就職活動をやめて青年海外協力隊に申し込んだものの、入れなかったのだという。 しばらくそのいとこの話を聞いたら、もう全開で自分探しをしている感じだったので、私は、「もののによると、自分探し系の若者を相手にしたビジネスも多いみたいだから、気をつけてあげてね」と進言した。 彼女は、でもどうやって気をつければいいのよ、ともっともなことを言った。年の離れた妹みたいで、昔から可愛がってたけど、所詮はいとこなのであって、生活を見張ることもできなければ、しょっちゅうお説教ができるわけでもない、という。 「そういう、ちょっと離れた立場だからこそ果たせる役回りがあるんじゃないかな」 と私は言った。 「自分探しとかにはまる人って、だいたいすごくまじめなんだって。まじめに将来を考えて、自分のしたいことを探そうとか思っちゃう。でもそんなのそうそう見

    「ふまじめな叔母さん」という役回り - 傘をひらいて、空を
  • 2009-12-15 - 空中キャンプ

    会社の後輩にひとり、洋服のすきな男がいて、わたしが四年前に買ったダウンジャケットを、「くれくれ」とねだってくる。毎年、冬になるたびにねだられる。わたしの持っているダウンジャケットは、ノースフェイスというメーカーのわりといいやつで、五万円以上したものだ。そうかんたんに手放したくはないが、今年の冬もまたいわれた。「最近ノース着てないじゃないすかー。くださいよ」。ものすごいおしゃれ執念である。わたしはついに根負けした。 この数年のあいだに、わたしの服装にもいろいろな変化があった。自分にはダウンジャケットやスニーカー、ジーンズといったアウトドア系のファッションが似あわないという事実を再確認し、服装の方向性を変えたのだ。わたしはほんとうに、ジーンズ姿がださい男になってしまった。だから正直、ノースのダウンも年に一度か二度、ほんとうに寒いときに着るだけになった。わたしがダウンジャケットを着ると、雪かきを

  • リアル指向 | 2008-08-16 - 虚数の根茎

    普段、テレビを見ていないのだが(というかそもそもテレビにアンテナがつながっていないしコンセントも刺さっていない)、実家に帰ったおかげてTVを見た。幸い、ほとんどがオリンピックか高校野球で、これらの番組は、昔からキライだったし、とくに番組に変化はなく、最近のTVの凋落ぶりを目にせずにすんだ。 とはいえ、これだけあふれているコメディ番組を目にしないわけにはいかず、やはりその、どうしようもなさが目についた。たとば、さんまのまんま、とか。昔はあんなに面白かったのにねえ。 ケータイ&インターネットが持つ破壊力は凄まじく、雑誌も、テレビもやられっぱなしだし、料理の作り方やら、旅行案内やら、グルメ情報やら、もうはやなんでもみんなインターネットで無料、という世界だ。テレビが面白くなくなっているのは、よくわかる。雑誌だって面白いと思わない。 だからといって、インターネットがとんでもなく面白いともおもわない。

    リアル指向 | 2008-08-16 - 虚数の根茎
  • エマージェンシー!オッサンをなんとかして! - Everything You’ve Ever Dreamed

    地元の青年会は季刊紙を春、夏、秋、冬と年四回発行している。僕は青年会書記代理という要職に就いているので、こないだの日曜の午後はその季刊紙の「夏の号」打ち合わせに参加していた。夏。もう夏なのだ。そういえば暑い。僕がぼうっとしているうちに空気は初夏特有のカラっとした熱を帯びていた。 公民館のいくつかある中会議室の一室を貸し切り、折り畳み式の長テーブルを4つ正方形のカタチに組み合わせ、パイプ椅子を並べ、即席の会議場を仕立てた。メンバーは会長オッサン、会計オッサン、書記オッサン、お祭り部長オッサンと謎のオッサン1号、2号とオッサンV3と僕の8名しかいないので、普段は週末の社交ダンスの練習場にも使われる広さを持つ会場は少々大袈裟かもしれない、なんて思いながらパイプ椅子を並べていた。 恐るべし。全員が着席した瞬間にこれだけのスペースがオッサン特有の臭いで充たされるのだから。オッサン恐るべし。何もいわず

    エマージェンシー!オッサンをなんとかして! - Everything You’ve Ever Dreamed
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