わたしが大澤さんの論考に初めて触れたのは2010年の「THINKING O」でした。 その中で、大澤さんは角田光代さんのベストセラー小説『八日目の蝉』を題材に、本来不幸(幸福)であることが必ずしもそうではない人間、そうはならない人生の不可解さを紐解いて行きます。 これほど豊かで恵まれた社会であっても幸福を感じられない現代社会、夢や希望を持てない今の人々、若者たち。“満たされても満たされない”むなしさ、やるせなさとはいったい何なのか・・・ そこには「物語化できない人生」の生きづらさがあるという大澤さん。誰もがよく知る小説、映画、アニメ、事象を取り上げながら、とらえがたい人間存在の本質に迫ります。 ***「八日目の蝉」あらすじ*** 角田光代さんのベストセラー小説。物語は第一章と第二章からなる。第一章では、不倫関係にある秋山の子を妊娠、中絶した過去をひきずる希和子の視点で描かれる。ある朝、希和