原作・梶原一騎、画・中野喜雄によるバイオレンスカラテアクション『人間兇器』をKindle Unlimitedで読んだんですが、たいそう面白かったし酷かったです。 Kindle Unlimitedはバイオレンス、ノワール系の劇画もなかなか充実している。少年漫画らしからぬ過激さの『ドーベルマン刑事』、特に警察ではない主人公が毎回数億円稼ぎだして十数人くらい殺す『野獣警察』、極悪非道の殺人鬼が終盤なぜか普通のヒーローになってしまう『堕靡泥の星』などなど…。 この系統では大御所中の大御所、梶原一騎原作作品もわりと充実している。『カラテ地獄変牙』『新カラテ地獄変』『若い貴族たち』『男の星座』、いずれもカラテ暴力と暗い情熱と時事ネタ混じりのハッタリに満ちた傑作ぞろいだが、それらの中でも個人的に衝撃を受けたのがこの『人間兇器』である。具体的に何がスゴいのかというと主人公の美影義人で、ここまで最悪かつ情け
漫画に限らずフィクションというものには、悪玉を主人公にした作品というものが少なからず存在します。そういった作品では、主人公に悲しき過去があったり、悪ならではの美学が存在したりして、悪とはいえ読者が応援したくなったり憧れたりするような何かが存在するのがセオリーでありましょう。ですが、今回紹介する梶原一騎+中野喜雄『人間兇器』の主人公・美影義人は一味違います。この男、本当にいいところが何一つないんです。彼を象徴するコマを一つ引用しましょう。 『人間兇器』合本版1巻767ページより 「おれは勝てそうな相手にゃすぐトサカにくるんだ!」ですよ。こんな情けないことを堂々と言える主人公はそうそういません。そして言葉だけではなく実際に、自分より弱い相手には暴虐の限りを尽くします。では自分より強い相手に対してはどう出るか。 『人間兇器』合本版1巻682ページより ご覧の通り、すぐ土下座し、泣きわめき、命乞い
塚本 晋也 (監督) 映画『斬、』について【1/5】 公式サイト 公式twitter 公式Facebook 2018年11月24日(土)よりユーロスペースほか全国公開! 250年にわたる長い泰平の後、開国するか否かで揺れる江戸時代末期、農家の手伝いをしながら剣の腕を磨いてきた若い浪人にも参戦のときが近づいていく……。塚本晋也監督の4年ぶりの新作『斬、』は、初挑戦となる時代劇。農村を舞台に限られた登場人物たちで描く小さな物語だが、現代の日本の状況に重なるばかりか、人間の性までを描く壮大な叙事詩の趣に驚かされる。生業を求めて流れてくるよそ者は恐れられ、大切な人を守りたいという切実な想いは燃えさかる戦意となり、若い感性による柔軟な試みは、経験や常識の力に阻まれる。どうしたら戦争はなくなるのか?という古代からの問いを、池松壮亮、蒼井優らのアンサンブルで、シンプルに鮮烈に突きつける必見作だ。塚本晋也
町山智浩さんが2021年8月3日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『孤狼の血 LEVEL2』を紹介していました。 \#松坂桃李 のサインが当たる⁉/ 8月20日(金)公開 映画『#孤狼の血 LEVEL2』 想像を絶する禁断の衝撃作! 新たな伝説がここにーーー。 ? 松坂桃李さんサイン入りプレスを抽選で2名様に? ✓@Yahoo_GYAO をフォロー ✓この投稿をRT ※8/19〆@Korounochi_2021 #GYAO https://t.co/L2k7weyyW2 — GYAO! (@Yahoo_GYAO) August 3, 2021 (赤江珠緒)今日は久しぶりの日本映画ですね。 (町山智浩)そうですね。今日は東映の映画ですね。『孤狼の血 LEVEL2』という映画についてお話します。『孤狼の血』というのは「孤独な狼」という意味なんですけど。一匹狼のことですね。で、その作品の
2021.02.23 『衛府の七忍』10巻感想~最終回後,桃太郎卿との対決はあったのか? テーマ:楽天ブックス(247649) カテゴリ:漫画 ついに『衛府の七忍』が10巻で完結,最終回を迎えた。 個人的に満足できるないようではなかったかが,感想など書いていきたい。それから,雑誌チャンピオンRED4月号に掲載されていた付録冊子の話もしていきたい。 衛府の七忍 10【電子書籍】[ 山口貴由 ] まず,10巻の内容であるが,箇条書きするとこんな感じ。 ・徳川家康は老衰で死亡 ・カクゴと伊織は家康の死で目的を失い,安住の地,トコヨノクニを目指す。 ・伊織,浦島太郎に誘拐される。 ・カクゴ,タケルと動地憐と合流し,浦島太郎を3対1でタコ殴りにする。 ・カクゴら怨身忍者たちは日本を捨てて海上で生活するようになる。 ・秀忠,日本を離れたカクゴたちを無視することにするものの,桃太郎卿が攻め入ろうと
まつろわぬ者たちの代表者たち・怨身忍者が覇府=徳川幕府と対決する『衛府の七忍』の最新巻では、表紙の七忍勢揃いが示すように、この巻で最後の怨身忍者・雷鬼が登場することになります。その正体は雷小僧こと黒須京馬――真田十勇士の力を背負った彼は、魔剣豪・上泉信綱と激突することに…… 大坂夏の陣で真田幸村に従い、六人までが討ち死にを遂げた真田十勇士。信州上田城のに現れたその生き残り、猿飛佐助・霧隠才蔵・筧十蔵・穴山小助の四人の前に立ち塞がったのは、十勇士の弟分であった少年忍者・黒須京馬であります。 主命によって佐助たちに挑む京馬は、大忍法「淤能碁呂」を用いると宣言。しかし次の瞬間、彼の肉体はバラバラになって…… そんな意表を突いた場面から始まるこの巻。佐助たちはその場から消え失せ、残されたのは無惨に京馬の体からもがれた肉片のみ――と、誰が見ても京馬が佐助たちに敗れ去ったと思われた時、その場に現れたの
久しぶりの全作評価企画です。 今回ご紹介する監督は、 園子温 これまで紹介してきた監督は全員大好きな映画監督でした。 でも今回は少し違います。 自分でも好きなのか嫌いなのか良く分かりません。 どちらかと言うと嫌いかもしれません。 でも全作観てしまっているのです。 せっかく観てるんだから記事を書こう たまには酷評の多い全作紹介もいいだろう 熱狂的信者の多い園子温作品でこれをやって大丈夫なのか少し怖いですが こんな僕が園子温映画の全てを厳しくジャッジさせて頂きます。 【絶対観るべき作品たち】 【観ても損はない作品たち】 【観たいと言うなら止めはしないが…作品たち】 3つのグループに分けさせて頂きます。 そして参考指数として 「そ」「の」「し」「お」「ん」の5文字を星に見立てて5段階評価させて頂きます。 では早速はじめましょう。 まずはこのグループから 【観ても損はない作品たち】 絶対!とまでは
バットマンの宿敵が誕生するまでを、独自のストーリーで描いた映画『ジョーカー』が、予想を超える反響を呼んでいる。世界興行収入が923億円を突破し、R指定映画として史上最高の記録を更新、アメコミ映画が比較的苦戦するといわれている日本の週末興行ランキングでも、4週連続で1位を獲得する快挙を達成し、まだまだ数字を伸ばしている状況だ。 そんな『ジョーカー』は、同時にいろいろな意味で波紋を広げてもいる。『ヴェネチア国際映画祭』最高賞受賞という異例の快挙にはじまり、アメリカでの公開に際しては、警察や陸軍が警戒態勢を強化するという事態……。社会的責任をめぐる内容への賛否の声、製作サイドや巨匠監督の発言が物議を醸し、使用楽曲に対する問題提起が生まれるなどなど、大ヒットを成し遂げるなかで、あらゆる角度から騒動が発生しているのだ。 『ジョーカー』は、なぜこんなにも人々の心をざわつかせ、娯楽作品の枠をはみ出して社
70年代に衝撃を与えた歴史的な作品 マーティン・スコセッシ監督の『タクシー・ドライバー』(76)が日本で公開されてから40年以上が経過している。今では時代を超えた名作の1本と考えられ、数多くの映画に影響を与えてきた。特に70年代にスクリーンで体験した人は、その強烈な印象をけっして忘れることができないだろう。 ニューヨークの路地のスモークの向こうから、一台のタクシーが現れる冒頭のただならぬ雰囲気。そこから一気に引きつけられ、運転手を演じるトラヴィスの行動に次第にこちらも同化していった。大きな衝撃を残しながら映画は終わるが、どこか不可解な部分があり、起こっていることをはっきり説明できない。現実と幻想が交錯していき、その境界線が分からなくなる。だからこそ、繰り返し見たくなる。そんな不思議な魔力を持った映画だった。この映画にどこかとりつかれ、その世界から出られなくなった人も多かったはずだ(主人公が
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で『バットマン』シリーズの最悪の敵、ジョーカーの誕生を描いた映画『ジョーカー』を紹介していました。 “Phoenix’s Joker brings something that no previous version has had: Humanity.” #JokerMovie – in theaters October 4. pic.twitter.com/zHA3ctcii5 — Joker Movie (@jokermovie) September 19, 2019 (町山智浩)今日、ご紹介する映画はあのベネチア国際映画祭で最高賞、金獅子賞を受賞した大問題作、『ジョーカー』をお送りします。 (町山智浩)はい。いまの曲はクリームというエリック・クラプトンがいたバンドの『White Room』という歌なんですけども。これがこの『ジョーカー』の
【インタビュー】山口貴由『衛府の七忍』読者にウケてほしくて描いている! ――著者の「パねぇ」エンターテインメント精神に迫る 2018ランクイン作家インタビューインタビュー山口貴由衛府の七忍 2018/03/19 人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。 今回お話をうかがったのは、山口貴由先生! 舞台は徳川家康が力をふるう乱世の終わり。ある日、村の仲間を惨殺され、さらに力およばず憎き敵に殺されてしまった少年・カクゴ。しかしカクゴの前に龍が現われる。このまま常世(天国)へむかうか、あるいは怨身となりて再び乱世によみがえるか? そう問われた少年が選んだのは……。 「摩 骸 神 変 怨 怨 怨――――怨身忍者 零鬼見参」!!!! 『このマンガがすごい!2018』オトコ編にランクインした『衛府の七忍』。 『シ
Netflixで配信中の「DEVILMAN crybaby」。その原作漫画が週刊少年マガジンに連載されていた1972年~1973年に、当時8歳の小石輝はリアルタイムで出会って衝撃を受けました。小石は「デビルマン」を「裏・道徳の教科書」として熟読し、現代では「進撃の巨人」も同じ系譜に連なると分析します。原作漫画にあって「crybaby」にないものとは? 賛否両論の「デビルマン」論、後編です(#1が公開中です)! ◆ ◆ ◆ サブカルは、単なる娯楽を超えた深い教訓になり得る 恋ちゃん(大手マスコミの元気な若手社員)「ちょっと小石さん。前回のコラムが、大変なことになっているじゃないですか!」 小石輝(恋ちゃんの先輩。重度のこじらせオタク)「うーん。こういうのを『炎上』って言うんかなあ」 恋「ツイッターの大半は、『稚拙な文章』『知性のかけらも感じられない』『レベル低い』『ダメなオタクが書いたような
2018年1月5日(金)からNetflixオリジナルアニメ「DEVILMAN crybaby」の配信が始まりました。これは永井豪さんの画業50周年を記念した作品で、漫画版はその展開などから、完全に映像化することは不可能だといわれてきて、実際にラストシーンまでを映像化した作品はこれまでありませんでした。この難題に挑んだのが、「夜明け告げるルーのうた」でアヌシー国際アニメ映画祭・長編グランプリを獲得した湯浅政明監督です。原作者である永井豪さんと湯浅監督に、本作についての話をうかがってきました。 DEVILMAN crybaby | 公式サイト http://devilman-crybaby.com/ Q: 湯浅監督は以前インタビューやイベントなどで、デビルマンのことを「他の方がやるぐらいだったら自分で作りたい」とおっしゃっていました。なぜ今、デビルマンの漫画版のラストを「自分が描かなければなら
永井豪さんの漫画『デビルマン』を原作としたNetflixオリジナルアニメ「DEVILMAN crybaby」(全10話)が1月5日に全世界配信されました。 DEVILMAN crybaby これまでにリリースされた『デビルマン』の映像作品と異なり、「原作をラストまで描く」ことで話題の同作。セクシャルでバイオレンスな原作を、「夜明け告げるルーのうた」でアヌシー国際アニメーション映画祭のグランプリ(クリスタル賞)を受賞した湯浅政明監督が映像化。特徴的な画調が独創的で特異な原作にかぶさって、ほぼ半世紀前に生まれた作品に現代のポップな命を吹き込んでいます。 原作を知らない世代にも、あるいは、これまでの映像化に思うところがあった人にもお勧めしたい同作。本記事では、永井さんと湯浅監督に作品公開を迎えた心境を聞きました。 永井豪さんと湯浅政明監督 永井豪「DEVILMAN crybabyはまさしく、ちゃ
いよいよ1月5日にNetflixで全世界同時配信が開始されたアニメ『DEVILMAN crybaby』。巨匠・永井豪の最高傑作のひとつである漫画『デビルマン』(1972年)を、アニメ映画『マインド・ゲーム』や『夜明け告げるルーのうた』などで知られる湯浅政明監督が徹底的に翻案。原作の内容を漏らすことなく、現代的にリメイクした作品となっている。 この『DEVILMAN crybaby』の配信にあたり、前代未聞の怪作『デビルマン』が後世に与えた影響を視覚化するための系譜図を作成し、その監修をつとめた海老原優氏の意図についての記事を掲載した(参照記事)。しかし、その記事中でも語られている通り、『デビルマン』という漫画史に残る偉大な作品ともなると、この系譜図に載せたい作品は人の数だけあるもの……。 というわけで、今回はオカルト業界を代表する雑誌「月刊ムー」編集長の三上丈晴氏、永井豪先生の大ファンを公
観始めたら、止まらなくてヤバい ──園さんは以前より、永井豪先生から表現者として多大な影響を受けてきたと発言されていますね。そんな特別なファンの目線からご覧になって、湯浅政明監督が完全アニメ化した今回の「DEVILMAN crybaby」はいかがでしたか? 予想以上に引き込まれましたね。このインタビューの依頼を受けたのが、たまたま仕事で海外に行っている時期で。「今夜は疲れてるし、最初の1話だけにしておこう」と思っていたら、止まらなくなって一気にエピソード3まで観てしまった。これはヤバいと、一旦休止した状態なんですが……。もうすでに続きが観たいなと(笑)。 ──どういうところに惹かれたんでしょう? まず面白かったのは、永井先生の原作をきっちり下敷きにしつつ、別の切り口をいろいろミックスしているところです。例えばキャラクターデザインひとつ取っても、オリジナルの劇画調タッチとはかなり違う。どこか
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