皆さんは最近、いつ映画館に行きましたか。仕事帰りに1人で足を運んだり、家族や友人と見たかった作品を見に行ったり。多様な楽しみ方ができるのが、映画館の魅力です。 映画館の中でも、小規模ながら独自の視点で選んだ作品などを上映するのが、ミニシアターです。ただ、経営難などを理由にやむなく閉館するところが少なくないのも現状です。 どうしたら観客に作品を届け続けることができるのか。そのヒントを探ります。 (仙台放送局記者 北見晃太郎/経済部記者 野中夕加)
叶井俊太郎さんと、プロインタビュアー吉田豪さん(撮影:サイゾー) 映画『日本以外全部沈没』『ムカデ人間』などを手掛けた映画宣伝プロデューサーの叶井俊太郎。小社に所属し数々の”問題作“を配給・宣伝してきたが、すい臓がんを患い、昨年6月には余命半年と宣告されている。 叶井が旧知の友人15人と語り合った人生観は、対談集『エンドロール!末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の“余命半年”論』(小社刊、発売中)に収録され、大きな話題となった。 今回、その15人には入らなかったものの“そこそこ深く長い付き合い”だったプロインタビュアー・吉田豪氏との対談が実現。吉田氏による、最初で最後のロングインタビューをお届けする。(収録日:2023年10月19日) ――叶井さん、久しぶりに会いましたけどさすがに痩せましたね。 叶井 でも、がんで痩せたわけじゃないから。がんがデカくなって、内臓を圧迫してて飯が食え
『ドライブ・マイ・カー』(2021年)で「第74回カンヌ国際映画祭」の脚本賞を含む4冠を獲得。「第94回アカデミー賞」の国際長編映画賞も受賞し、その名を映画界以外にも広く知らしめた濱口竜介監督。 昨年は最新作『悪は存在しない』(4月26日公開)が「第80回ヴェネチア国際映画祭」銀獅子賞(審査員大賞)を受賞し、『偶然と想像』(2021年)の「第71回ベルリン国際映画祭」銀熊賞(審査員グランプリ)受賞とあわせて、世界3大映画祭の主要賞を制覇した。 黒澤明監督以来の日本人映画監督としての快挙が国内で脚光を浴びる中で、世界からは日本を代表する映画監督として注目を集めるとともに、日本映画界の近年の充実ぶりも世界に示した。 そんな“時の人”に、『ドライブ・マイ・カー』(興収13.7億円)でも大ヒットにはならない日本映画界での商業的な成功に対する意識と、独立系映画の苦境、日本映画界の課題について聞いた。
大型映画館ではかからない作品を、日夜上映してくれるミニシアター。近年では時代のあおりを受け、経営状況が悪化しているシアターが少なくありません。そんななか、連日お客さんで賑わい、上映作品を度々ヒットさせるミニシアターがあります。それが「ポレポレ東中野」。映画ライターのISOが、ポレポレ東中野のヒットの秘訣を、支配人の大槻貴宏さんに取材してきました。 いやぁ、映画って本当にいいもんですね。 はじめまして、ライターのISO(イソ)と申します! いつもは映画について執筆している僕がどうしても取材に行きたかった場所。 それは、映画館! 映画館って変な空間ですよね。真っ暗な中、何も喋らず、スマホもいじらず、知らない人たちとじっと前を向いて同じものを共有する場所。なんだか一種の聖域みたい。 そんな映画館の中でも格別なのがミニシアター。大型映画館ではやらないような、小粒だけど心に響く名篇や馴染みのない国の
Illustration by Matthew Cooley. Images in Illustration Warner Bros; Everett collection/ Lucasfilm LTD. Disney/PIXAR, Everett Collection, 2 Somewhere, in a galaxy far, far away, Georges Méliès never sends a bunch of folks on a trip to the moon. The adventures of space explorers and time travelers, androids and alien races don’t thrill a generation of kids chomping popcorn at Saturday matinees. The
How will 2023 in film be remembered? As the year that the business models of streaming and Marvel started to wobble; the year that Hollywood learned to start worrying and fear the AI bomb ticking beneath it; the year when film production halted due to the writers’ and actors’ strikes and the unseen labour behind cinema took the spotlight – from the minions of the ‘mini-room’ to extras who risked b
最初は食わず嫌いしていた作品をほぼ全財産で買い付け ――『ストールンプリンセス』と出合ったときのことを教えていただけますか? 粉川なつみ(以下、粉川) 初めて作品を知ったのは2021年7月、8月くらいでした。そのときは「王道のストーリーだなー」「既視感のあるビジュアルだなー」と感じて、ちゃんと観ていなかったんです。 『ストールンプリンセス :キーウの王女とルスラン』ポスター ですが、それから半年後くらいにウクライナ侵攻が始まって、私にもなにかできることはないかと焦燥して、製作会社の問い合わせフォームへ「大丈夫?」と連絡したことから、すべてが始まりました。 改めて作品を観てみたんです。そうしたら、食わず嫌いしていただけで、アニメーションのクオリティの高さに感動して「これは!」と、当時勤めていた映画配給会社で取り扱いたいと検討したんですが、スケジュールの都合などで難しく……。もともと独立志向だ
長らく過酷な労働環境が問題視されてきた映画業界にも、ようやく働き方改革の波が訪れはじめている。制作会社に勤めるAさん(40代半ば)とフリーランスのプロデューサーであるBさん(40歳)は、「数年前に比べればセクハラやパワハラ、物理的暴力の類いはかなり減った」と口を揃える。 背景にあるのは、映画業界がここ数年来悩まされている人材不足だ。若者は厳しい労働環境を嫌って業界に流入してこない。あるいは、入ってきてもすぐに辞めてしまう。結果、作られる作品の本数は多いのにスタッフは現場で取り合いになっている状況だ。その危機感が映画人たちの意識を変えていった。 2023年4月にできた「日本映画制作適正化認定制度」は、日本映画制作適正化機構(映適)によって運用されている。2023年3月、映適、大手映画会社で組織されている日本映画製作者連盟(映連)、独立系プロダクションで組織されている日本映画製作者協会(日映協
2023年、ウェス・アンダーソンの新作が続々と公開されている。9月1日には『アステロイド・シティ』が劇場上映され、Netflixでは9月27日の『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』を皮切りに、4日連続で彼の新作映画が配信された。 ウェス・アンダーソンの作品のルックは独特で、ポスタービジュアルや予告編を見ただけで「彼だ」とわかる。強烈な個性、作家性を持つ監督だといえる。 新作が相次ぐいま、あらためてその作家性について考えてみたい。彼の作品から感じられる「ウェスっぽさ」の正体とは何なのか? 独特のビジュアル、一筋縄ではいかないストーリーは、どんな背景や意図によって生み出されているのだろうか。映画ライター・ISOが考察する。 ウェス・アンダーソン(中央) 1969年、アメリカ・テキサス州ヒューストン生まれ。小学生のころに演劇の脚本を書き始め、大学時代に俳優のオーウェン・ウィルソンと映画の共同
かつて、「娯楽の王様」であったハリウッド映画。それが今、観客動員数と製作本数の半減により、産業として終わりを迎えつつある。そのことを、16本の作品批評を通して詳らかにしたのが、『ハリウッド映画の終焉』(集英社新書)だ。 発売直後から話題を呼んでいる本書の刊行を記念し、著者の宇野維正氏と、『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ―コンテンツ消費の現在形』(光文社新書)などで知られるライターの稲田豊史氏が対談。前編では映画について本を書くことの困難と、SNS時代における映画評論の立ち位置について語り合う。 左:宇野維正氏 稲田豊史氏 ◆「映画」で1冊の本を出すことの難しさ 宇野 稲田さんの『映画を早送りで観る人たち』は、その元となったネットメディアの記事が話題になった時に目を通していたので、内容をわかったつもりになっていて刊行当初は読んでなかったんですよ。でも、あまりにも売れてるから
『22年目の告白 -私が殺人犯です-』『見えない目撃者』『最後まで行く』等、日韓の映画界をつなぐ架け橋を務めてきた制作会社ROBOTのプロデューサー・小出真佐樹氏。 次々にグローバルヒットを生み出し、Netflixが今後4年間で25億ドル(約3,300億円)を投じると発表するなど、映像エンタメの中心地といえる韓国。しかし小出氏によれば、それはあくまで一元的な見方だという。そこでBrancでは、小出氏にロングインタビューを実施。 「『最後まで行く』が出来上がるまで」「韓国映画界に訪れた危機」「日本映画界の課題と希望」の全3回にわたって、じっくりと語っていただいた。第2回は、コロナとNetflixによって激変が起こっている韓国映画・映像業界の“いま”をお届けする。 ≫第1回はこちらから! 韓国は“投資”の文化、日本は“製作委員会”の文化――小出さんはTwitterで韓国映画・映像界の危機を訴え
2021年のこと。新刊映画本情報が少なすぎるという苛立ちから、ぼく(=髙橋)とパートナー(=山本麻)は「毎月、その月あるいは前月に刊行された新刊映画本を5冊読む」ことに決め、「月例映画本読書録」と題してクロス(ショート)レビュー方式で紹介していく……という習慣をnoteで始めた。にもかかわらず情けなくも、掲げられた「月例」の言葉むなしく、1年と経たずに更新遅滞が常態化し、ついには途絶えてしまった。しかし、いまも変わらず毎月5冊を選んでは買い求め、必死になって読んでいる。書くほうへ手が回らないのだから、もはやなぜ意地になって「5冊」の決まりを厳守しているのかわからないのだが。 とうとう2022年は単に読んでいるだけで終わった。けれど、それではさすがに寂しいじゃないかということで、せめて1年間の映画本を振り返っておくことにした。毎月5冊、すなわち年間60冊。むろん全てに満遍なく触れることはでき
自分で何かをやるって、かっこいい──映画配給会社の代表を務められているということは、やはり子供の頃から映画がお好きだったのでしょうか? そうですね。特に父親の影響ですが、「映画が一番の娯楽」という世代なので、幼いときからよく映画に連れて行かれていました。当時はテレビの洋画枠が週に何日かあって、夜更かしして映画を観たりすることが日常的でしたね。 ──その経験から、映画業界を志すようになったのですね。 10歳くらいで(映画が好きな気持ちの)ピークが来たんですけど、中学校に入ると音楽に興味を持つようになって、その時期は映画を追いかけていたわけではなかったんです。でもまた10代半ばから、より映画に興味を持つようになりました。「映画に関わる仕事をしたい」と思ったのはその頃ですね。 ──波多野さんは、映像コンテンツ会社に就職されてから、ロングライドを起業されたそうですね。もともと起業や社長に興味があっ
1本の映画が作られ、観客のもとに届けられる過程には、監督やキャストだけでなくさまざまな業種のプロフェッショナルが関わっている。連載コラム「映画と働く」では、映画業界で働く人に話を聞き、その仕事に懸ける思いやこだわりを紐解いていく。 第16回では、映画館・Strangerの代表である岡村忠征にインタビューを実施した。18歳でジャン=リュック・ゴダールに衝撃を受け映画監督を目指すも挫折し、その後はデザイン会社の社長として活躍していた岡村。しかし“映画へのリベンジ”として2022年9月、東京・菊川にStrangerをオープンさせる。映画館の開業にはどのような思いがあったのか? 45歳を過ぎたときに表現者になりたいと思った──岡村さんは2022年9月に東京・菊川に開業した映画館・Strangerの代表を務めています。また2011年にはデザイン会社のアートアンドサイエンスを設立し、その代表取締役でも
U-NEXT映画部特集#2 新社会人におすすめしたいエンパワメント映画5本 U-NEXT映画部特集#3 サメ、モンスター、ゾンビ…タイパくそくらえムービー U-NEXT映画部特集#4 U-NEXTが15,000本以上のラインナップを誇るワケ 業界一を誇る定額制見放題270,000本以上 日本でもコロナ禍をきっかけに急速に拡大した動画配信(VOD)サービス市場。定額制動画配信(SVOD)の国内の市場規模は、2022年は前年比16.7%増で4,508億となり、市場シェアはNetflixが4年連続首位。2位に浮上したのがU-NEXTだ(*1)。 中でも圧巻なのは、業界一を誇る定額制見放題の270,000本以上というラインナップ数。うち映画の本数は15,000本以上にのぼる。最新作はもちろんのこと、未公開や旧作、マニアックな作品から権利関係で現在鑑賞が難しくなっているレア系まで多岐にわたりカバーし
米THRの6人の映画評論家が、2000年代の映画ベスト50を発表。まず初めに各自がリストを用意し“イエス”または“ノー”で投票。そして、その中で“イエス”が多かった80作品に0~3点のスコアをつけ、点数を計算。その後、幾多の議論の結果、リストが完成した。唯一の選考基準は、6人全員がその映画を好きか、またはリスペクトしていること。ちなみに2022年に製作された作品は対象外。(『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』や『TAR/ター』の話をするのは一旦休憩しましょう。) 以下、選外佳作リスト 『隠された記憶』(2005)・『ダークナイト』(2008)・『ある子供』(2006)・『ホーリー・モーターズ』(2012)・『ハート・ロッカー』(2009)・『マーガレット』(2011)・『マリッジ・ストーリー』(2019)・『ピアニスト』(2002)・『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(20
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