アーティスト・奈良美智にとっての故郷、そして「はじまりの場所」がテーマの個展「奈良美智: The Beginning Place ここから」(10月14日〜2024年2月25日)が行われる青森県立美術館でインタビューを行った。後編では、展覧会のハイライトとなる部屋と平和への思い、旅やコミュニティ、自由など、作家を貫く思想について話が及んだ。(聞き手・文:宮村周子)
展覧会に先がけ、出展作家の石黒賢一郎さんに直撃インタビューを行いました。 アニメシリーズ、廃墟シリーズ、ガスマスクシリーズなど、現代の世相を問うテーマを細密描写で次々に発表する写実画家の石黒賢一郎さん。現在は広島市立大学で油画を教えながら、さらに立体、映像へと活躍の場を広げていらっしゃいます。 「超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」では4点が紹介されますが、作品への思いや写実絵画についてなど、興味深いお話を伺いました。 Q.《存在の在処》の制作には10年かかっていらっしゃるとのことですが。 石黒氏:はい。高校の教師だった父親が退職した春休みに学校で壁や黒板などを描きまして、あとは父を家で描いて、服などは持って帰ってマネキンに着せて描きました。作品は最初にどこかで展示してから、その後何度も展示していただいたのですが、展示のたびに加筆をしていた記憶があります。僕は描いていいと言われたら、ずっと描
描かれなければならない絵というものがあった。レオナルドはモナリザを。マネは昼食のときの女性を裸で。ウォーホルは時代のアイコンをシルクスクリーンで大量生産。同様に会田誠は『犬』を描かねばならなかった。その理由を詳細に明かした著書『性と芸術』を携え、会田誠本人に会いに行った。連載「アートというお買い物」とは…… 物議を呼んだとき、芸術はまた一歩、先に進むのである 現代美術家、会田誠の最新著書『性と芸術』の帯には、書名と著者名よりも大きな文字で、こう書かれている。 「日本の現代美術史上、最大の問題作(スキャンダル)『犬』は、なぜ描かれたのか?」 どれくらい「問題作」かというと、その作品を展示した美術館に抗議と作品撤去の要請の圧力があったほどである。 2012〜13年、森美術館で開催された「会田誠展:天才でごめんなさい」。18歳未満の入室を禁止する部屋に展示された『犬』シリーズをはじめいくつかの作
<直島を訪れたことのある人なら、色とりどりのネオンが光る銭湯や、外壁そのものがスクラップブックのような「はいしゃ」が脳裏に焼きついているだろう。それらを生み出したのが大竹伸朗だ> 各島で展開される数々の作品・施設群 ベネッセアートサイト直島は、その規模および内容や活動において世界に類をみないユニークな場所である。その活動はアートを中心とするものの、それだけに限定されるわけではなく、また、直島と名前が付いてはいるが、実際は近隣の豊島、犬島を加えた3島で展開されている。 美術館やギャラリーと名の付く施設は複数あるが、ほかにも、集落のなかで使われなくなった古民家等を利用してアーティストが家全体を作品化した「家プロジェクト」や、自然環境のなかには屋外彫刻インスタレーションなども点在する。 アートがいわゆる建築の箱の中だけに限定されるのではなく、自然や生活のなかも含め幅広いエリアに展開する、まさに「
「ヘンタイめ!」「エロじじい!」「このロリコン野郎!」……。 このように、何かにつけ会田誠は、ネットやSNS上でやたらに罵倒されてきた稀代の絵描きである。 いや、罵倒だけにとどまらない。2012年に森美術館で個展を開催した際には市民団体「ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)」から美術館へ抗議文が届いたし、会田がゲスト講師を務めた京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)の公開講座の受講者からは、わいせつで性暴力性のある作品を見せられたと訴訟を起こされたこともあるほどだ。 そんな会田の作品の中でも、極めつき悪評なのが「犬」である。首輪で拘束され、両手両足が欠けた裸の少女を描いた作品シリーズだ。会田がこの「犬」第一作目を手がけたのは大学院1年生の時である。1989年、23歳だった。 同作に関し、会田みずからが丹念に解説した一冊が刊行された。「性と芸術」(幻冬舎刊)である。本書について会田に話を聞
村上隆 PHOTO : STEPHANE FEUGERE FOR WWD ©︎ FAIRCHILD PUBLISHING, LLC 村上隆は、ニューヨークの美術館ガゴシアン(Gagosian)で自身の展覧会“An Arrow through History(歴史を射抜く矢)”を5月11日〜6月25日に開催している。 同展覧会は、マディソン・アベニューにある2つのガゴシアンの美術館で開催。さらに、公式サイトとVRヘッドセットでも没入型のVR体験を提供する。来場者はSNSアプリ、スナップチャット(Snapchat)のレンズを通して各ギャラリーや会場の建物外壁でARアニメーションを見ることができる。VRのプロジェクトは、昨年ナイキ(NIKE)が買収したバーチャルファッションブランド、「RTFKT(読み方:アーティファクト)」が手掛けた。 展覧会では、絵画、肖像画、彫刻、スーパーフラット(Supe
TSと季刊誌『広告』の連動によるスペシャルインタビュー最終回は、画家の松井冬子さん。 「恐怖」「狂気」「ナルシシズム」「生と死」などをテーマに、精神的肉体的な「痛み」を視覚的に感じさせる作品を描いてきた彼女。内臓を露にした女性や、幽霊となった女性など、一般にはおぞましく、不気味ともいえる題材を古典的な日本画の技法で描いた作品を初めて見たとき、日本画についてはそれほど知らないのに強烈に惹きつけられる自分がいた。彼女の作品の何がそれほど人を惹きつけるのか? その発想の源はどこにあるのか? 横浜美術館で大規模な個展『松井冬子展−世界中の子と友達になれる−』を開催直前の松井さんを訪ねて話を聞いた。 近藤ヒデノリ(TOKYO SOURCE 編集長) 1 「世界中の子と友達になれる」 近藤:まずは横浜美術館での個展について聞かせてください。今回は副題が原点ともいえる「世界中の子と友達になれる」ですが、
TSと季刊誌『広告』との連動インタビュー第10回は会田誠さん。 『巨大フジコ隊員VSキングギドラ』『紐育空爆之図(戦争画RETURNS)』『自殺未遂マシーン』『灰色の山』など、エログロや、社会問題など多様なテーマで、絵画だけでなく、写真、立体、パフォーマンス、映像、漫画、小説など多彩な作品を発表してきた会田さん。日本の現代美術界でも特異なポジションを確立しつつある彼の発想の源とは? 来年には都内某美術館での個展も控えている彼に話を聞いた。 インタビュー:近藤ヒデノリ(TS編集長) 1 今、準備中の作品について 近藤:まずは今、とりかかっている作品について聞かせていただけますか。 会田:来年の11月初頃から都内某美術館で個展が始まるんで、最近2年くらいと今後1年はほとんどその準備をやっています。ちょっと前までも、金沢美大の学生と1カ月間、段ボールで半立体のようなものをつくっていましたが、これ
『前編はこちらから』 ■【6】原子の国のダリ(Dali Atomicus) ダリと、ニューヨークで鳴らしたラトビア出身の高名な写真家フィリップ・ハルスマン(Philippe Halsman/1906-1979)によるコラボレーションが、「ダリ・アトミカス=原子の国のダリ」である。この愉快な連作は、妻のガラが神話のレダに扮するダリ作「レダ・アトミカ」(Leda Atomica)に対する一種のオード(頌歌)と言えるものかもしれない。 一見すると、無意味とさえ思われるシチュエーションの中では、ヘビのようにのたうつ水の流れ、ダリと家具、そして数匹の猫たちの姿が見てとれる。現在ならCGやフォトショップを使って得られる効果を、早くも1948年の時点で実現しているのを考えれば、これは実際、驚くべき写真ではあるまいか? けれどもその代わり、往年のやり方で撮影されているため、天井からは家具類がワイヤで吊され
美術家で作家の赤瀬川原平さんの姿はその生前、3度ほど目にしたことがある。ただし、いずれもトークイベントの一観客としてだが。 そのうち一つは、2000年2月に、美術評論家の山下裕二氏との共著『日本美術応援団』の刊行を記念して開かれたイベントで、私はこのとき、友人とつくっていたミニコミ誌を渡そうと意気込んで出かけた。赤瀬川さんに見てほしかったのは、ミニコミの中身というよりもその表紙だった。というのも、そこには、当時発行を間近にひかえていた二千円札を、新聞に載った写真から私が模写した絵を入れていたからだ。だが、赤瀬川さんはイベントのあとにも予定が入っていたため、イベントが終わってから観客と話をすることはできませんと開演前にあらかじめアナウンスがあり、ついにミニコミを渡すことはかなわなかった。 なぜ私は紙幣の模写を赤瀬川さんに見せようと思ったのか。すでにピンときた読者もいるだろうが、もちろん、彼が
東麻布にある現代美術画廊。大竹伸朗、河井美咲、田尾創樹、須藤由希子、喜多順子、後藤輝、松村有輝、デールバーニング、松本力など、取扱い作家の紹介と企画展のスケジュール。〒1060044 東京都港区東麻布2-12-4 信栄ビル1F お問い合わせ03-5571-5844 info@takeninagawa.com
誰もやったことがない絵ってなんだろうって、そういうことは考え続けている 2006年、東京都現代美術館での大規模展『大竹伸朗 全景 1955-2006』は、文字通り、孤高の作家が描き/貼り/写し/つくる歩みを幼少時から現在まで時系列で示す異色の試みだった。あれから3年、新たな「景」に挑み続ける大竹に、最新個展会場で話を聞いた。 聞き手:編集部 ——まず、3年前『ART iT』13号で開催直前にインタビューをさせていただいた『全景』展について、振り返っての感想を伺えますか。 何事も終わってみると、結構あっけなく過ぎちゃうものだよね。結果、もちろん実現できてやってよかったという思いは強くあります。ひとつキリがついたというか。東京から宇和島に移り住んで、周囲は俺のしていることにほとんど関心がないっていう環境の中で、逆に美術ってどういうことかを自問自答するようになった。そういう20数年の後の『全景』
現代美術の旗手として注目を集め続ける大竹伸朗。 その創作は、今どきの「コンセプトありき」ではない。 体の内側から湧いてくる、正体のわからない衝動が原動力だ。 だからこそ、大竹の作品は、見るものを圧倒するエネルギーを持つ。 答えが半分見えているようなプランやコンセプトに基づけば、 できあがるものに安定感はあるが、それが人の心を打つだろうか。 頭の中の想定を突き破る力は「わからない」ところに宿っている。 人間って、データを取り出して分析して 先に考えるようになるでしょ 「現代美術でも、コンセプトを論理的に語ってから表現するのが基本みたいなところがあって、絵を鑑賞する時も『何を言わんとしているか』と、脳みそで見る。だから(創作の動機が)『衝動』や『直感』なんて言うとバカにされてさ。でも、体の内側から湧いてくる、正体のわからない衝動に沿って、手探りで描き続けてできたものは、いわゆる完成度は至らない
イタリア・ルネサンス美術が頂点を極めた16世紀初頭。この盛期ルネサンスに活躍した三大巨匠による作品は、その後長らく西洋美術の理想の時代とみなされた。 レオナルド・ダ・ヴィンチ 『最後の晩餐』、『モナ・リザ』などの絵画のみならず、彫刻、建築、数学天文学など様々な分野で研究を残した万能の天才。 ミケランジェロ 西洋で最も巨大な絵画の一つとも言われるバチカンのシスティーナ礼拝堂の天井フレスコ画が特に有名。 ラファエロ ラファエロは、それまでの芸術手法を統合・洗練して、女性的で優雅な様式を確立した総合芸術の天才。 エル・グレコ ギリシャからスペインのトレドに移住した異邦人画家。ルネサンス後期マニエリスム。 バロック バロック期には、風景画、風俗画、静物画などの日常に根ざしたジャンルが確立した。ルーベンス、レンブラントらは、オランダ絵画の黄金時代を築いた。 ルーベンス アニメ『フランダースの犬』で主
心の傷を"継ぐ" アーティスト・渡辺篤インタビュー 後編東京藝術大学在学中から自身の体験に基づく、傷や囚われとの向き合いを根幹とし、かつ、社会批評性の強い作品を発表してきたアーティスト・渡辺篤。卒業後は路上生活やひきこもりの経験を経て、2013年に活動を再開した。「引きこもり」「傷」「鬱」など自身の経験をもとに、作品づくりに取り組んできた渡辺が、「黄金町バザール2016ーアジア的生活」に初参加し、さまざまな人の「心の傷」をウェブ上で匿名で募集する新プロジェクトとして発表した。「黄金町バザール」での新作について語る前編に続き後編では、渡辺がアーティストを目指したきっかけや、キーパーソン会田誠との関係、また渡辺を語る上で欠かせない「引きこもり」にまつわるエピソードなどをお届けする。 渡辺篤 個展「止まった部屋 動き出した家」(2014)より ©ATSUSHI WATANABE photo b
現代美術家の会田誠さんが「これまでの作家イメージを根底から覆す新しい方式・形式・素材に挑戦」した展覧会を開催中だ。「なんなら今までの僕のファンが総取っ替えになっても構わない」と意欲を見せる今回の会田誠展のタイトルは「はかないことを夢もうではないか、そうして、事物のうつくしい愚かしさについて思いめぐらそうではないか。」 これは岡倉天心が日露戦争のあとに書いた『茶の本』から引用したもので、展覧会の告知ビジュアルでは、この言葉と国会で答弁する安倍晋三首相の写真をコラージュしている。政治的、社会的作品が物議を醸すことの多い会田さんらしいアイデアだがその下には小さく「この告知ビジュアルは展覧会の内容と激しく乖離したものである」と断り書きが。
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