誰もが知りたがっているくせにちょっと聞きにくいセックスメディアのすべてについて教えましょう。あ、いや、すべてじゃないな。 一部、くらいかな。 と、ウディ・アレン風に書き出してみた。えーと、このレビューは全年齢対象です。 荻上チキ『セックスメディア30年史』である。 性風俗史について触れた本は過去にもたくさんあったが、多くは風俗業界に精通したライターや編集者によって書かれたものだった。たとえばソープランドが別の名称で呼ばれていたころから活動を続けてきたルポライターのいその・えいたろう、バンド「ペーソス」の活動でもおなじみのなめだるま親方こと島本慶、漫画家兼AV男優の平口広美(『フーゾク魂』は、壮絶な名著だ)などなど。 荻上はそういうタイプの書き手ではなく、堅い分野を主戦場とする気鋭の評論家だ。その守備範囲の中にメディア論なども含まれていることを考えると、この本を彼が書いたことは非常に正しかっ